高島宗一郎福岡市長は8日、福岡市内のホテルで市政報告会(政治資金パーティー)を開催。1,000人余りの聴衆を前に、1時間におよぶプレゼンテーションを行なった。会費は1人5,000円。高島氏のプレゼン力は、その後に特別講演を行なった麻生太郎副総理が絶賛。アナウンサー時代に培ったスキルが、出し惜しみすることなく発揮されたかたちだ。ただし、聴衆の反応(拍手の大きさ)では、独特のユーモアを交えて笑いを誘う"麻生節"に軍配が上がっていた。
今回の内容は、今年11月に行なわれる見通しの福岡市長選での再選を意識したものになっていた。冒頭、3ヵ所に設置されたスクリーンに、市長の公務の様子を伝える写真などが流行りのポップ・ミュージックとともに次々に映し出された。その後、満を持して登場した高島氏。そのバックには、彼を市長選に担ぎ出した故・石村一明氏(前福岡市議)の写真。高島氏は、市長選出馬までの経緯、石村氏から「とりもどせ元気!」のキャッチフレーズを託されたことなどから語り始めた。
その後のプレゼンの中心は、福岡市が国から指定を受けた国家戦略特区についてであった。今回の市政報告会への参加を呼びかけるあいさつ文で、《菅原道真公からさしこ(HKT48)まで、これまでの福岡は左遷されて来る場所でした」「「左遷されて来る場所」から「夢をかなえる舞台」に変えたい》(括弧内は原文ママ)とした高島氏はプレゼンにおいて、国家戦略特区の1つに指定された「創業特区」による支店経済からの脱却を強く訴えた。
高島氏は、スターバックスやAmazon.co.jpなど、世界に展開する企業が本拠を置く人口60万弱の都市シアトルを引き合いに出し、住みやすく、若者が多いという市の特性は起業に活かせると主張。「発信しなければ、存在しないのと一緒」と、福岡市の魅力・強みを広く伝えていくことの意義も付け加えた。閉会の挨拶を行なったのは、前福岡県知事の麻生渡氏。高島氏のこども病院移転の決断を賞賛し、支援を呼びかけた。
それにしても、高島氏の市政報告は、全般を通して『いいとこ取り』の内容だ。中央保育園移転問題や議会中のフィットネスクラブ利用、出張時のファーストクラス利用、与党会派からも批判の声が上がる議会軽視の姿勢など、各種メディアから追及され、世間を騒がせた事案については、何ら説明が行なわれなかった。「創業特区」に関しても、市から国へ出した提案に盛り込まれていた「クルーズ船のカジノ営業の規制緩和」については言及されなかった。参加者からの質疑応答の時間もなかった。
高島市政への疑問・不安を払拭するべく、直接本人の説明を聞こうと参加した市民も決して少なくはなかっただろう。また、福岡市について「左遷されて来る場所」と福岡市長が発言したことは前代未聞。開いた口が塞がらない。仕事で福岡市へ赴任し、市民として街の発展に貢献してきた人々に対して失礼極まりなく、福岡市民は愛する故郷を侮辱されたに等しい。市民のさまざまな疑問・不信感・怒りをよそに再選へと突き進む高島氏。なお、現段階で高島氏を含めて正式な立候補を表明している人物はいない。
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