<キャリアの横暴>
キャリアと携帯電話メーカー、それからコンテンツ開発会社とユーザの理想的な関係は、どのようなものだろうか。
メーカは製品が安定していて、使い勝手が良くて安いものを供給できればいい。コンテンツ開発会社も、面白くて有益なコンテンツをつくるために心血を注いでくれればいい。キャリアは、品質の良い製品にすばらしいコンテンツを提供するだけでなく、ユーザの意見に耳を傾けて、通信環境の改善に努めてくれればいい。
これが理想だが、韓国の現実はこれとはかけ離れている。
キャリアは、初期の設備投資にかけた費用を回収するために基本料と言うのを設けているが、資金回収が終わった段階でも基本料を取り続けていて、それはそのままキャリアの利益になっている。
また、キャリアは設備投資を積極的にしないことによって、政府の技術開発のロードマップと意欲をダメにしたりする。政府は携帯電話の開発環境を共通化することによってソフトウェア事業の活性化を図ろうとしたが、キャリアはその政策を逆手にとって、多彩な機能が採用された外国製の携帯電話の輸入を阻止したのである。それだけでなく、携帯電話のハードウェア識別番号を事前に登録した製品だけが流通できるようにしたし、カントリーロックとSIMロックを活用して、ユーザが携帯電話を自由に乗り換えできないようにしたのだ。それに、世界的に好評を博している韓国製の携帯電話に対して、キャリアの収入に影響を与えそうな機能は取り除いた、所謂スペックダウンされた製品だけを流通させている。
キャリアは自社の利益のためなら、ユーザにどのような不便があってもお構いなしなのだ。
160バイトのメール送信が国際規格になっているにもかかわらず、文字数を80~90バイトに制限しておいて、それを超えると独自の送信方式であるMMSを使わせることによって追加費用をとっている。これは互換性の問題なども含んでいて、批判の対象になっている典型的な事例でもある。それから、発信者番号表示機能は何もコストがかからないサービスなのに、ユーザから料金をとっている。
3Gの場合には、画像通話を前面に打ち出しているが、実はユーザは画像通話よりもデータが通信の方にもっと需要があった。3G時代の到来とともに世界的にデータ通信が活性化されたが、韓国のキャリアは設備投資に遅れをとっていて通信スピードが芳しくなかった。
しかし、無線LAN機能を提供するとユーザの要求に満足を与えることもできたが、自社の収益が減ることを懸念して、必死に無線LANの導入を遅延させた。その代わり、そのようなデータ通信に対する需要を抑えるために、とんでもない料金政策を採ったのだ。
キャリアは、3Gの設備投資が終わった段階で上記の料金を引き下げはしたが、それでも高かった。そのため、思わぬミスでデータ通信でもしようものなら大変なことになるので、携帯電話を購入したら暗証番号を設定して、それを解除しないとデータ通信ができなくなるようにする人が多かったのだ。
高い費用を払ってデータ通信をやろうとしても、自由にインターネットにアクセスできたわけもなかった。もっぱらキャリアが見せてくれるページとコンテンツに満足しなければならなかった。
コンテンツ開発会社に対してキャリアが優越な地位を確保するようになると、所謂甲乙関係による不正行為が多発するようになった。コンテンツ開発会社は、コンテンツの質の向上に努力するより、キャリアを接待したり、ロビー活動することに熱心になったのだ。また、自社のコンテンツに対してキャリアの社員を賄賂で買収し、ダウンロードさせることによって、まるで人気が出ているような行為までさせていたのだ。
コンテンツ開発会社も、良質のコンテンツの制作よりも簡単に収益が上がるポルノ物の制作に傾注するようになる。
キャリアは接続料を徴収するので、すでに利益が発生しているにもかかわらず、収益が多めに発生するコンテンツに対しては利益の配分を再調整することを要求し、利益を持っていった。また、マーケティング費用を開発会社に負担させたり、ヒット作が出たら子会社にそれを渡したりと、いろいろな不法行為が繰り広げられた。キャリアと開発会社とは力の関係で差がありすぎて、このようなことが起こっていた。
世界をリードしているような韓国通信業界において、このようなことがあるとは想像もしていないだろう。早期にこのようなことがなくなることを期待してやまない。
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