10日、データ・マックスではノンフィクション作家でジャーナリストの立石泰則氏を福岡に招き、「自壊するソニーとパナソニック~創業者精神(経営理念)を失った企業の行く末」をテーマとした特別講演会を開催した。会場となった天神クリスタルビル3階大ホールでは、多くの聴講者が興味深そうに耳を傾けていた。
日本の家電メーカーは海外勢に押されて苦境に陥っっており、とくに国内トップクラスのソニーやパナソニックへの影響が大きい。不動産や事業の売却、また人員削減などの大幅なリストラで一時的な黒字は出すものの、本業の業績が回復し赤字体質を脱却したとは到底言いがたい。今回の講演ではこの2社にスポットを当て、長年にわたって両社への取材を重ねてきた立石氏により、これまで両社がどんな道を歩み、これからどうなっていくのかが語られた。
立石氏はまず、会社を発展させるには「社員の心を1つにするもの」が必要だとし、それこそが「創業者精神」であり「経営理念」であると説いた。松下電器(現パナソニック)の場合には、それは「産業人の使命として貧乏の克服」することであったし、ソニーの場合には「技術で日本を再建」することであった。両社とも「社会性」を持った会社の使命によって社員の心を1つにし、発展を遂げていった。
だが、企業が成長し、やがて大企業になってくると、言葉でしか創業者を知らない社員が増えてくる。社長にしてもしかりで、「サラリーマン化」が進んだ社長により、企業が昔から大事にしていたことがいとも簡単に捨て去られてしまう。「販売の松下(パナソニック)、「技術のソニー」と呼ばれた両社も、このような経緯から自社の強みを見失い、迷走および凋落が始まってしまった。
立石氏は、「企業は社員の心を1つにしないと、いかなる危機も乗り越えることはできない」とする。パナソニックにしても、ソニーにしても、今の迷走を続ける路線のままでは明るい未来は見通せない。会社がどういうかたちで生まれ、どの方向に向かって行こうとしているのかを、今の時代に合わせたうえで、今一度考えなければならない、と結んだ。
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