最初の企画が頓挫し、自信を喪失しかけた中島社長と創業メンバーの仲間たちは、次の展開を考える上で、様々な会社の社長に会い、直接、話を聞くことを始めた。「少なくとも、自分が未熟なのはよくわかったが、致命的に能力が至らないとか、そういうことじゃない」(中島社長)。「日本の社長.tv」の草創期が語られる。
――各社の社長の話を記録に残そうということになったのですか。
中島 そうですね。まず、私たちもそうでしたが、各社長のお話は、経営を学ぶ教材になると思いました。今から7年前ですね。勉強になるから、ビデオにとっておいて、私みたいな福岡で起業したいという若者に見せたいと。いきなり、孫正義社長や稲盛和夫さんの本ばかりを読むと、「この方たちの話は、いろんなことをやりつくして欲が消え失せた人が至る境地だ」となりますから。
インタビューを続けるなかでわかったのですが、社長にもいろいろな方がいらっしゃるな。猪突猛進、自分でバリバリやる人もいれば、自分の欲は満たされ、いわゆる『利他の精神』という境地に至る人もいる。これは、経営者としてのステップがあるな、と。
――『経営道』ですから。1つずつ進化していくわけですからね。
中島 それがなんとなくわかりました。最初から自分を捨てて、人のために生きなくてはいけないわけではないと。人の話を聞いて身につけられるものなら、私は世界一成功していますからね(笑)。その人なりのスタイルがあって、『正解』があるわけじゃない。自分なりにやればいいのかと思いました。そして、せっかくなのでビデオを撮る。勉強の意味もあったのですが、少しビジネスライクな話をすると、『メディアを持つ』ということは、経営者に会いやすくなります。B to Cは『立体的な音で聞こえる怖い話』が最後で、次は「企業向けの何か」という前提でした。それなら、何をやるにせよ社長に会いやすい仕組みを作ることは、何の事業をするのかわからなくても、すごくプラスになるだろう。
効率的な新規開拓のきっかけづくりというイメージですね。どうせだったらネットで見ることができるコンテンツにしよう、ということで「福岡の社長.com」(現・福岡の社長.tv)を開設しました。最初から、「これは世のなかを変えるインフラになるかもしれない」と見据えたビジネスプランをつくって苦労してきたというよりは、いろんな人の話を聞き、「もったいないからビデオに撮っておこう」と、それである程度やって、振り返ってみて「これ、何かになるのではないかな」という感じです。
――無我夢中にやっていたことが、ビジネスになるんじゃないかと気づく、それは『正解』ですよ。
中島 そうですね。行き当たりばったりの連続で、結果として、今のところまだ可能性はあると思っている感じです。
――福岡では、どれくらいの社長インタビュー動画が入っているのですか? そのなかで、とくに感銘を受けた社長は?
中島 今、520社くらいですね。もちろん、感銘を受けた方はたくさんいらっしゃいますし、いろいろな路線がありますが、1人ぱっとお名前が浮かんでくるとしたら、タマホームの玉木康裕社長ですね。十数年で2,000億円くらいの規模の会社つくっていらっしゃいますし、表には「ガハハ!」って笑う大味で、すごい勉強をされていますし、誰よりも働いています。でも、メリハリつけてやられているので、次から次への事業展開ができるのだと思います。
――中島社長と同じ若い経営者では?
中島 福岡ではありませんが、最近、東京で知り合ったミチシルベ株式会社の金田卓也社長が印象に残っています。今、21歳なんです。9歳ぐらいのときに3,000万円の借金を残してお父さんが亡くなり、「お母さんには無理をさせない」ということで、12歳でIT業を始めて、14歳の時、アフィリエイトで稼いで全部返済したそうです。全部英語のGoogleが出している資格を10代のうちに全部とっていまして。業界で『天才』といわれる方ですね。先日、ビジネスプランやモデルなどを聞かせてもらい、正直、「若いな」とは思いましたが、人を引き込む魅力や説得力、素直さとか含めて、すごい人だと思いました。もし、私が21歳のときにこの人に会っていたら、起業を諦めていたのではないかと。
――社長インタビュー事業は、どのへんで勢いがついていきましたか。
中島 感覚的に、今も勢いがついてきたという実感はありません。3年くらい前まで、コツコツと福岡で掲載企業を増やしてきただけですから。提案をして、取材をして、インタビュアーもほぼ私がやって、それから「これを事業にしようかな」と。少しずつ社員を増やしながら、コツコツやってきたという感じですね。2年半前くらいに全国展開を始めました。都道府県単位で作った代理店が各サイトの運営をやるというものです。「福岡の社長.tvをこの県でやりませんか?」と、日本中に30社くらい一気に作ったと思います。
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