高島宗一郎・福岡市長は11日、福岡商工会議所主催の講演会で、「グローバル創業特区とこれから」と題して、国家戦略特区として指定を受けた福岡市の取り組みについて語った。
今回の戦略特区で行なわれる規制緩和等の施策について、高島市長はフィギュアスケートになぞらえ、国から指定された規定のメニューである「規定演技」と、福岡市独自の取り組み「自由演技」があると説明した。
「規定演技」の1つである「雇用条件の明確化」について、高島市長は、「日本は雇用基準が厳しい、解雇の基準が厳しいといわれる」として、「正しくいえば雇用条件が不明確」であり、雇用の規制緩和ではなく、これまでの裁判例を参考に、明確にしていくものだと述べた。同時に、「開業時期は、社長と数人で会社を立ち上げる時期であって、雇用条件が定まっている時期ではなく、起業後の5年間はこうしたところをしっかり明確にしていく」とした。
ほかに、「規定演技」としては、公道の民間開放の基準緩和、外国医師の診察・外国看護師の業務解禁、古民家等の活用のための建築基準法の適用除外、在留資格の見直しを挙げた。
高島市長は、福岡市の創業特区には、「創業等の支援」「MICE(注)の誘致」の2つの大きな柱があると説明。「自由演技」の部分に対して、5月末時点で、234件のアイデアが福岡市に寄せられたとして、「留学生の在留資格の規制緩和」、「インターンシップ生に対する就職活動解禁前の採用働きかけ」を紹介した。
戦略特区における雇用についての施策の1つ、「雇用労働相談センター」の開設に関しては、「解雇された人材の再教育とマッチングを行なう」と福岡市オリジナルのプランを説明。「スタートアップカフェ」では、「コンシェルジュが常駐。起業までに必要なものの準備をしてきてもらって、ここで手続きがすべて終わるようにしたい」と述べて、「公募をいったんとりやめて再公募する」と明らかにした。
さらに、「スタートアップ法人税」として、シンガポールを例に挙げ、「海外からの企業誘致も見込めるように法人税を15%程度まで引き下げることを目標としている。しかし、起業5年間の企業で法人税をしっかり納めているところは少ない。起業5年以内で、かつ法人税をしっかり納めることができる、早い段階で成長し、利益を上げるような企業が対象になる」とした。
今後、6月以降に区域会議が行なわれ、夏ごろをめどに第1弾区域計画が予定されている。最初の区域会議では、主に「規定演技」について協議される見通しであると語った。
講演会では、福岡商工会議所の末吉紀雄会頭が挨拶し、「グローバル創業特区」としての福岡市の取り組みについて、「経済界として期待をしている。十分に成果がでるよう、協力していきたい」と述べた。
今回の講演会では、高島市長が「自由演技」という「市独自の取り組み」についてはほとんどオープンにされなかった。福岡市は戦略特区の提案のなかで、MICEの誘致に関して集客の材料に船上カジノや創業に関してスタートアップ期間に限定した解雇規制の緩和を提案していた。自らの提案を明らかにしていない一方で、市の提案である「留学生の在留資格の規制緩和」を民間から応募されたものであるかのように説明。「創業特区」の全容については講演会で明らかにされなかった。
(注)Meeting(企業会議・研修)、Incentive(報奨・招待旅行)、Convention(国際会議)、Event/Exhibition(イベント・展示会)の、多くの集客が見込まれるビジネスイベント。
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