銀座の有名な高級クラブのホステスだったまゆみ夫人は当時から強い政治的野心で知られ、他の政治家が「本命」だったという。ところがまだ父親の秘書にすぎなかった渡辺氏の熱烈なプロポーズに押されて結婚したのは、渡辺氏が「総理大臣になる」と言ったことが決め手になったと言われている。それ以来、夫婦の共通の目的は「渡辺氏の総理大臣就任を目指すこと」になり、それが唯一の絆になった。渡辺氏自身よりまゆみ夫人がこれに熱心だったという事実は、渡辺氏の党代表辞任の原因になった資金問題の経緯で明らかになっている。
夫婦でそこまで入れ込んだ首相官邸への夢を、果たして簡単に捨て切れるのか。だが渡辺氏はすでに東京の自宅に住んでいないという話もある。
「2年前に週刊文春がテレビ局の女性記者との不倫疑惑を報じた時、まゆみ夫人が離婚届けを提出した。その後に実質的に『復縁』したものの、戸籍は入れられていない。渡辺氏もそんな夫人が住む東京の自宅には居づらくて出て行ったという話だ」(みんなの党関係者)
総理大臣への野心だけで結び付いていた元夫婦の絆は意外ともろかったようだ。
「渡辺氏が東京で自宅以外に居住場所としていたのが北野アームズ。自民党本部のすぐ近くにあるホテル型マンションだ。まゆみ夫人と喧嘩して自宅にいられない時、渡辺氏は避難場所としてここを使っていた。しかし健康食品会社からの巨額の資金提供事件が発覚した時、賃貸契約を解約している」(同党関係者)
よって渡辺氏が東京で滞在する場所は都内のホテルだとの説もあるが、実際のところは不明だ。これが渡辺氏の行方不明説をさらに強める根拠にもなっている。
一方でみんなの党の内部も落ち着かない。原因のひとつが現代表の浅尾慶一郎だ。
「ものごとをはっきりと言っていた渡辺氏に比べ、浅尾氏は発信力が弱く、党の存在感を推し出せない。それが党内の不満の原因になっている」
みんなの党関係者はこう語る。
渡辺氏という求心力を欠いた党内は、いまや3つの勢力に分かれているという。
「石原氏と一緒に行動したいグループ、橋下氏と合流したいグループ、そして薬師寺道代氏や松田公太氏ら渡辺氏の側近たちだ。渡辺氏の側近は『渡辺代表の時代の方が良かった』と主張して、浅尾氏への批判を強めている」
浅尾氏は石原氏に接近する一方で、橋下氏にも連絡をとっている。このようにうまく綱渡りして野党再編を乗り切ろうとする行動が、むしろ党内での批判の種にもなっている。
「『いったいどっちに付くんだ!』という批判が党内である。浅尾氏のリーダーシップのなさに対する不満が日ごとに大きくなっている」
そんな状況で、独自の行動にでるグループもある。
「橋下氏と組みたいグループは、結いと合流することもいとわないだろう」
実際に、結いの党側はこの動きを歓迎しているようだ。水面下で話し合っているとの情報もある。結いの党の関係者にこれについて尋ねると、「もともと彼らは同じ党にいた仲間だ。一緒にやっていくことに抵抗感はない」との返答が返ってきた。
2014年には20億円余りの政党助成金が支給されるみんなの党。来年の統一地方選を「決戦の時」としてとらえる資金不足の野党にとって、この党が持つ「既得権益」はこの上ない魅力がある。よって近い将来に「草刈り場」になるのは必至だろう。
それより前に渡辺氏が復帰して、その求心力をもって党内をまとめるのか。気力はともかく、その体力は残っているのか。
いちどまわりだした歴史の歯車は、そう簡単に逆行することはない。みんなの党は以前のみんなの党でありえない。
6月22日に通常国会が閉じられた後、その動きは本格化する。
(了)
【永田 薫】
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