<人材育成から営業手法までを身につけていない>
ガリヤが破綻した最大の理由は何か。それは経営力の欠如と言える。企業経営にはヒト、モノ、カネ、情報という「資源」が必要であり、経営者には欲求や行動力、企画立案や発想、先見性などの「条件」が求められる。
しかし、同社が資源を活用していたのか。また長澤社長が条件を備えた人物だったのかと言えば、疑問だ。
本来なら創業時に自社の理念や経営方針を固め、経営者として時代の変化を嗅ぎ取り、戦略や戦術を立てることが不可欠になる。
しかし、創業からピーク時までに、取り組むべき編集者の教育や営業マンの育成、媒体力の強化、資金繰り、他社や他メディアの動向チェックなど、持てる資源を生かす努力を全くしていなかったようだ。
「面接でも自分が嫌いなタイプは拒絶する。でも、好きなタイプはいきなり100点の評価をつけ、仕事ぶりを見ながら減点するやり方だった」と、営業・編集部副部長として2013年5月末まで勤務した戸高幹人氏は語る。
さらにその社員が「79点まで下がると『あなたはダメな人ね』『こんな人だとは思わなかったわ』と、手のひらを返したような言い方をしていた」という。
戸高氏は長澤社長とは22歳の時に出会い、20年来の知り合いだったことで、2009年に請われてガリヤに入社。入社前までは「福岡の女社長、長澤由起子」はカリスマ的と考えていた。しかし、「外から見ていた長澤社長と社内の同人は、こうも違うのか」と、ギャップの大きさにかなり困惑したようだ。
ただ、何とか業績を回復軌道に乗せるために、戸高氏は営業に邁進。観光協会などの新規スポンサーを次々と開拓している。ホテル業界からの転職だったが、社会人経験は広告営業でも如何なく発揮された。
しかし、ガリヤでは、何も知らない新人に対して、フリーペーパーのビジネスや広告営業の手法を教えることは、ほとんど行なわれていなかった。前出のM氏がその辺の実情を語る。
「社員募集では編集者やライター、企画営業を謳う。だから、応募してくる若者には良いイメージしかない。でも、入社すると、社長は『企業を回って広告を取ってこい』『何度も出向けば広告は取れる』『追い返されてなんぼよ』といった精神論しか語らない。これでは営業マンは育たないし、デザインやライターの仕事をしたい若い子は続かない」
ガリヤがあくまで「広告媒体」という意識なら、スポンサー獲得のための仕組みやマニュアル、また費用対効果を判断するシステムを構築しなければならなかった。売上げが右肩上がりの時に、そうした人材育成から営業手法までの経営力をつけていなかったことが、同社にとって致命傷になったようだ。
(当記事は各関係者の証言をもとに作成しています)
(つづく)
【釼 英雄】
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