かつて世のトレンドを牽引してきたはずの出版業界が、ネットの普及やメディアの多様化にともない低迷を続けている。国内における雑誌の推定発行部数は、1997年にピークに達して以降は減少を続け、6割弱にまで落ち込んだ。新聞の発行部数も右肩下がりを続けている。以前より人々の紙離れは顕著になっていたが、近年はスマートフォンやタブレットの普及が進むにつれ、それがさらに加速度を増している。人々は、もはや出版社や新聞社などから与えられる情報をただ受動的に得るだけではなく、むしろネットを通じて能動的に情報を得るとともに、SNSなどを通じて自ら情報を発信していく立場にまでなった。紙媒体の衰退とともに、今後の出版業界はどのようになっていくのか――。
今回の連載では、出版業界を取り巻く現状について、2つの切り口から探ってみることにしたい。
「出版は斜陽産業だ」と言われて久しい。情報収集の端末はもはや紙媒体だけではない。スマホやタブレットなど電子媒体が多様化する一方で、貴重な収入源だった雑誌の広告収入は軒並み落ちている。ベストセラー頼りになってしまった出版業界は、これからどうなっていくのか。
<従来型モデルは成り立たない>
出版全体の2013年販売額(出版科学研究所調べ、電子書籍除く)は1兆6,823億円(前年比3.3%減)。内訳は、書籍が7,851億円(同2.0%減)、雑誌は8,972億円(同4.4%減)、月刊誌は7,124億円(同3.4%減)、週刊誌は1,848億円(同8.1%減)。ピークだった1996年の2兆6,563億円から4割程度が市場から消え、縮小傾向に歯止めがかからない。
これまで出版業界は、売上高1,000億円を超える講談社、小学館、集英社の大手3社によって牽引されてきた。
リーマン・ショックの影響を受けた09年度決算において、いずれも大幅な赤字を計上。とくに広告収入の低下が目立ち、出版事業の従来型モデルが収益力を失った象徴となった。
集英社が09年5月期で同16.7%減、講談社が08年11月期で前期比10.2%減、小学館が09年2月期で同13.9%減と、いずれも広告収入は2ケタ減収した。
この時期は、中小出版社関係者によれば、「大手出版社の元編集長の肩書きを持つ人材が、当社のような小さな出版社の求人に応募してきた。当時はそれだけ不景気だったのだろう」。今やフリーとして独立する編集者も少なくないなか、編集作業をこなすだけの裏方ではなく、企画や人脈などの個性を発揮しなければ生き残れない時代になっている。
リーマン・ショック以降、各社とも業績が持ち直したかというと、そうでもない。それぞれの直近決算を見ると、一進一退の状況がわかる。
集英社は13年5月期、売上高1,253億4,900万円(前期比0.6%減)、当期利益31億 8,200万円(同15.2%減)。講談社は13年11月期、売上高1,202億7,200万円(前年比2.0%増)、当期利益32億1,400万円(同107.3%増)で増収増益は19期ぶり。小学館は14年2月期、売上高は1,025億5,000万円(前年比3.7%減)、当期利益4億6,300万円(同63.9%減)と減収減益だった。講談社は、単行本とマンガ両方でベストセラーが出たため好調だった。
雑誌に掲載する広告、マンガ雑誌の連載から生み出されるマンガ単行本、そしてベストセラー。この3つが大手出版社の既存収益源だが、もはや広告収入増が見込めない大手出版社にとって、ひとえに収益は「本が売れるかどうか」だけに左右されていることがわかる。
毎年ヒット作が生まれれば御の字だが、それだと安定した収益構造をつくれないのは自明の理。そこで新たな市場として「電子書籍」が期待されているが、市場規模はまだ1,729億円(電子雑誌・電子新聞含む、野村総研調べ)に止まっている。
18年には4,995億円まで伸びる予測で、野村総研はこの市場について、「スマートフォン・タブレット端末の普及とともにグローバル企業が台頭し、国内企業は端末・プラットフォームの選択やサービス差別化に左右される」としている。これは何を意味するのか。
(つづく)
【特別取材班】
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