今回は、韓国の通信市場の歩みをたどってみることによって、韓国の通信市場の現状に対する理解を深めてもらいたい。
1つの国が通信市場を主体的に運営していくためには、通信方式を自ら決定することができ、通信設備を自国の技術のある会社で生産できなければならない。なぜかというと、通信市場では、交換機や基地局の通信設備などを生産する会社の重要性が、とても大きいからだ。
要素技術を保持している設備会社は通信方式を決め、通信に必要な優れて安定性のある設備供給と設備構築、それから運営ノウハウを持ってキャリアをサポートしてはじめて、キャリアは安定的なサービスを顧客に提供でき、収益をあげることができる。
ところが、通信市場がアナログ通信からデジタル通信に移行しようとしていたとき、エリクソンのようなグローバル通信設備会社のほとんどは、GSM方式を採用した。その結果、ヨーロッパ全体はGSM方式を採用することになり、GSM方式が時代の大勢になってしまった。
しかし、通信市場への参入では後発であった韓国政府は、このメインストリームに参加せず、1つの賭けをすることになる。当時の韓国政府の官僚は、技術的に自立を図って国家競争力を高めたかったし、企業は携帯電話だけでなく、高付加価値の通信設備市場への参入を渇望していた。キャリアも新しい技術を導入して成長産業に参入したいという思惑があったため、関係者全部の利害が一致したかたちで、技術的には優れているが、まだ商用化されていないアメリカ方式のCDMAにチャレンジすることになる。
全世界の通信関係者は、韓国の無謀な挑戦に否定的だったのだが、韓国は驚いたことに一生懸命これに取り組んだ結果、短期間にCDMA交換機の開発を実現するだけでなく、携帯電話の生産にも成功を収める。これをベースに、韓国は移動通信網を構築し、サービスを開始し、韓国をCDMAのテストベッドとして活用するとともに、これによってノウハウを蓄積することになり、その結果携帯電話を輸出できるようにまでなる。
この過程で、韓国の携帯電話は競争力の土台をつくったし、今のような世界的に高いシェアを占めるようになった足場をつくったのである。
<クアルコムの豹変>
コア技術なしにチャレンジしたCDMA事業は、コア技術を握っているチップ供給会社であるクアルコムに依存せざるを得ない状況であった。初期の共同開発の段階が過ぎ、CDMA事業が軌道に乗ってくると、CDMA技術とチップの独占供給権を持っているクアルコムは、韓国をパートナというより儲けの相手としか考えない態度へと豹変した。
チップの販売量が増えていくにも関わらず、クアルコムは初期に締結した契約書にこだわり、販売条件を調整してくれないどころか、むしろ値上げを要求してきた。チップの供給がタイトになってきたとき、クアルコムは共同開発をしてきた韓国に対して、何の特典も与えてくれなかった。このような状況に対して、クアルコムにもし抗議でもしようものなら報復があるかもしれないので、それさえできなかった。
この苦い経験を教訓に、韓国政府は移動通信の政策を樹立する際には、必ず複数の会社と複数の標準にしている。
クアルコムは独占的な地位をいいことに、韓国の技術力のある会社に屈辱を与えたりして、多くの会社がクアルコムに背を向ける結果を招いた。政府もこのような苦い経験を活かしてその後、ワイブロ(Wibro)のような独自技術を開発することを決める。
(つづく)
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