西日本一の歓楽街・中洲の名物ママとして、全国的に有名な藤堂和子さんの新刊「頭角をあらわす男 70の流儀」(KKロングセラーズ)の売れ行きが好調。すでに増刷も行なわれている。紀伊國屋書店福岡本店の5月度ベストセラーランキングでは、ビジネス書で1位、総合で2位に入った。他所でも飛ぶように売れており、各書店の目立つ棚で、本の表紙になった藤堂ママの姿を見かけた人も多いはずだ。
「お客さんからね、アンタの顔を見たら『買わんといかん!』ってなるたいって、言われましたね(笑)」(藤堂ママ)。書店に並ぶ着物姿の藤堂ママに、全国各地の常連さんが新刊ならぬ"震撼"した様子。しかし、いくら政財界のお偉いさんや芸能界にも常連さんが多い藤堂ママだからといって、表紙だけで本が飛ぶように売れるわけではない。
小生が一読したところ、なるほど、出世した男たちの立ち居振る舞いに共通する『デキる男』のポイントなどが書かれてあり、世代を問わず、とくに営業の参考になる内容であることがわかった。43年間、50万人の男たちを見てきた藤堂ママは新刊に、「24歳から水商売を始めて、お客さんから教わってきたことを全部伝えたい」という想いを込めたという。
同業の女性経営者にも「70の流儀」を愛読している人が多い。帝国ホテルの記念パーティーに2,400人を集めた藤堂ママに学びたいという人も多いだろう。短刀直入に、中洲ビジネスの極意とは何かを質問した。すると、藤堂ママは、「『心が中洲』であればいい」と答える。やり方の『正解』は1つではない、――と。
中洲の良さは、適度に都会で適度に田舎、文化・情緒のなかに人情味があふれているところだ。店だけでなく、客のほうも少し気を遣い、みんなが楽しく過ごせる場所をみんなで作る。スマホが当たり前の時代となり、コミュニケーションの主流は変化したことは確かだが『伝えたい想い』は変わらない。直筆の手紙でも印字のDMやメールでも、すべて同じで「お店に来ませんか?」では何も残らない。そこにひと言、それぞれのお客さんに会話の内容などを元にしたメッセージを添えればいい。
客の飲み方でも十人十色。水割りを最後まで飲み干して作ってもらいたい人もいれば、グラスが空く前に作るのがベストという人もいる。マッチの匂いを嫌がるスモーカーもいる。そうした細かいところまで覚えるのがプロの仕事と、藤堂ママはいう。そして、その根底にあるのは、1人1人のお客さんを大切にするおもてなしの心だ。
「私を育てたのはお客様」という藤堂ママ。今も恩返しとして中洲全体の活性化のために奔走する名物ママを育てた成功者たちの「70の流儀」。世代・年代、職種を問わず、多くの社会人に読んでいただきたいビジネス書である。
【長丘 萬月】
<プロフィール>
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
福岡県生まれ。海上自衛隊、雑誌編集業を経て2009年フリーに転身。危険をいとわず、体を張った取材で蓄積したデータをもとに、働くお父さんたちの「歓楽街の安全・安心な歩き方」をサポート。これまで国内・海外問わず、年間400人以上、10年間で4,000人の風俗関係者を『取材』。現在は、ホーム・タウンである中洲に"ほぼ毎日"出没している。
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