<キャリアの胡坐>
政府と業界、それから研究員が技術開発にしのぎを削っている間、CDMAサービスの商用化に成功したキャリアは、段々と保守的になった。CDMAにチャレンジするのに相当の投資と苦労をしたキャリアとしては、できるだけ二度とこのようなチャレンジはしたくないというムードになったのだ。
通信市場で3Gへの標準に対する競争が起こったとき、キャリアは安易にもWCDMAを採用する道を選んだ。WCDMAはCDMAのライバルであるGSMの発展型であるが、すでに市場ではGSMが主流になっていたので、今までCDMAにチャレンジしたことを忘れ、たやすい道を選択したのだ。
実際、3Gを導入する目的は、全世界をローミングで単一化しようということだった。しかし、この目的も業者間の対立によって、結果的にできなかった。時間が経って、3Gの一番のメリットは高速データ通信であることが明らかになった。それからCDMAの改良型であるCDMA2000も、その後、3Gとして性能を認められるようになった。キャリアが先見の明があってCDMAの改良型であるCDMA2000を選択したならば、設備投資の節約はもちろんのこと、CDMAの技術開発と設備産業の発展にも寄与できただろう。安易に主流を追うことになった選択が、結果的にはそれほどキャリアにはプラスにもならなかった。
WCDMAの事業の選定に脱落したLG社は、3Gサービス事業を諦めると発表する。
それから、SKテレコムもKTも、実はそれほど3Gに関心を示さなかった。2000年度にWCDMAの事業権は確保するが、07年度になってやっと重い腰を上げることになる。
このように3Gへの参入にも遅れていたため、3Gの投資がまだ回収されておらず、4Gへの参入も、世界的に見たときには、それほど早い方ではなかった。それに韓国政府が4Gの標準規格として進めているワイブロに多額の投資をしたなかで、同じ4Gとして世界的に主流になりつつあるLTEにも、対応せざるを得ない状況になった。
CDMAには一度成功はしたが、キャリアは胡坐をかいて、標準を主導するどころか通信強国としての夢も遠ざかった。変化を恐れ、大勢を追うことによって、結果的には無駄な設備投資をすることにもつながった。その結果、当初夢見ていた設備産業の競争力はなくなり、世界へ輸出する道も絶たれているのが現状だ。
<駄目になりつつあるワイブロ>
韓国政府は3Gで経験した失敗を他山の石に、4Gでもう一度通信強国になるために、独自開発した移動型ワイヤレス通信技術であるワイブロを集中的に育成していくことにした。しかし、この技術はデータ通信を中心にした技術であるため、キャリアの立場からすると、音声通話市場をなくしてしまう危険な技術でもあったのだ。それでSKテレコムは、この事業が成功できないように、いろいろな抵抗を試みた。事業権を確保しただけで投資を遅延させたり、いろいろな方策を繰り出した。
ワイブロはLTEとともに4G標準として採用される可能性が高いだけでなく、巨額の投資も行なわれて、すでに商用サービスも開始されている。設備の開発も完了していて、運営ノウハウも十分蓄積された状態なので輸出もできる状況である。
通信インフラがまだ構築されていない国では、データ通信が中心になっているワイブロにかなりの関心を表明している。ロシアなどでは、すでに構築事例もあって、かなりの好評である。
以上のように独自のチャレンジが実を結んだ時期、クアルコムとの軋轢、3G参入時の選択の誤り、ワイブロという4Gのデータ通信標準規格への新しいチャレンジなど、その間、韓国の通信市場は紆余曲折を経て今に至っている。
(了)
≪ (前) |
※記事へのご意見はこちら