<Web投資の失敗がトラウマになった>
現在、どんなフリーペーパーもWebサイトを持ち、クロスメディアとして情報発信を強化している。Webは広告媒体として高い収益を生むわけではないが、読者のアクセスやコメントなどがダイレクトにわかる。
今日、Webは読者のレスポンスやクライアントのマーケティングを考えるうえでは、ペーパーよりも優れた媒体だと言えるのではないだろうか。
ガリヤもフリーペーパー事業を先行する時期に「gariya.tv」「gariya.com」というWebコンテンツや動画を通じ、いち早くスポンサー情報を発信する事業に取り組んだ。
しかし、しばらくして撤退している。長澤社長は「Webサイトの制作、管理に何千万円も投資したけど、全然収益があがらないじゃないの」と激怒したという。おそらくそれが撤退した理由だと考えられる。
ただ、時代を先取りするメディアが簡単に浸透するわけがない。試行錯誤を繰り替えながら、ベターな方法を探っていくには時間を要する。また、経営者ならスタッフや業者を信頼しつつ、期限と目標を設定し任せていく義務もある。
もし自分が理解できないのなら、専門家の講習を受けたりと学習して、状況を好転させるなど、経営者として打つ手はいくらもあったはずだ。
ところが、長澤社長はそうしたことを一切行なわず、目先の収益ばかり追求した。それどころか、「とにかく収益が出なかったガリヤ放送局の外し方は尋常じゃなかった。専門スタッフをいきなり放り出したわけだから」と、戸高氏は関係者から聞いたという。
それゆえ、時代の変化も嗅ぎ取れず、ビッグビジネスの可能性を失う。結果として他社がWebで先行してしまうと、手も足も出なくなってしまったのだ。
「インターネットの広い世界、反応の早さをなぜ理解できなかったのか。へんな言い方だが、社長はそこにあるものしか信じない人だったと思う」(戸高氏)。
長澤社長は投資対効果というより、端から効果しか見ていない。効果が出ないものは、投資にも値しないという考え方なのだろう。
加えて、莫大な投資額を回収できなかったことが、相当のトラウマになったようだ。それが再びWeb参入を勧められても、頑に拒否した理由だったと思われる。
しかし、ビジネスには変化も必要である。既存メディアが競争激化で頭打ちになることが少しでも想像できれば、他のメディアに参入するか、別の事業を育てるか。経営には選択と集中が不可欠なのだ。
経営者の双肩には従業員の生活も載っている。だからこそ、ビジネスを育てるという使命感も持たなくてはならない。だが、長澤社長には目先の収益しか、頭にない。売上が見えないものは信用しない。これでは、経営戦略なんか立てられるわけがない。
(当記事は各関係者の証言をもとに作成しています)
(つづく)
【釼 英雄】
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