<最良の利便性に富んだ工場団地>
今回、確保した京浜島工業団地の一角は、厳密に言うと『京浜島工場団地内東鉄工団地』である。この団地と東京都大田区は、1969(昭和44)年に公害防止協定を結んでいる。鉄工団地内で、産廃処理の業務が許可されているのである。あとで触れるJR品川駅まで8kmもない立地条件のなかで、今どき産業廃棄物処理業務を許される場所は、東京都内中心部にはない。24時間営業も許される。住民対策にも頭を痛めることもない。後で知った同業者は、「藤田社長!!凄い買い物をしましたね」と羨むそうである。
工場用地確保の苦労を、藤田社長が率直に語る。
「東京に拠点を築くことを決めたのが3年前だった。東京湾岸の要所を探して回ったが、適当な用地が見つからない。たまに見つけると入札があり、不調の連続であった。少し焦り始めていたときに、今回の物件に遭遇したのが1年前のことだ。地主サイドと数十回にわたって交渉して取得した。リニア中央新幹線工事の開始を思うだけでも、この要所の優位性には震えが止まらない。ツキがあったのであろう」と。
東京工場のフル稼働を7月に設定している。オープニングセレモニーも計画中だ。最も苦労するのは、人材確保である。思案した結果、「福岡から人材を送り込む」ことにした。社員たちに「お金を求める人は東京に行かないか。倍の稼ぎができるよ」と訴えた。若い連中が名乗り出た。毎月60万円を超える報酬は間違いないそうだ。大田区大森駅周辺に、賃貸マンションを借り上げ中である。
<少なくとも200億円を握る>
2020年東京オリンピックまでに、都市東京の大改造がなされているのは周知のことである。あらゆるインフラ投資が行なわれている。今後10年間で、東京には関連含めて100兆円が投資されるという試算もある。47(昭和22)年頃から計画されていた外環状線4路線が、半世紀を超えてようやく完成させる工事が始まった。当初予算から膨張して、この4路線の工事金額は8,000億円に達すると囁かれている。大半が地下工事である。同社の得意とするところだ。
藤田社長に言わせると、「この4路線で処理される汚泥量は、1,000万m3と予測されている」そうだ。阪神高速道路で発生した汚泥量が100万m3であった。同社が受注した金額が48億円である。10倍の処理が必要とされている東京外環状4路線工事では、単純に計算しても最低500億円の金額が見込める。工事代金が高騰しているから、600億円に膨れるという指摘もある。「私は我が社単独だけで独り占めするような我欲さを持ち合わせていない」と喝破する。「しかし、最低でも200億円の工事はいただく」と決意を表明した。指定工法が『中性化固化材使用』となっているからこそ、本家の意地もあるのだ。この4路線の工事の山は、3年から4年で200億円を掴む作戦を展開しようとしているのである。
<リニア中央新幹線はオマケ>
いよいよ東京品川・名古屋間に、リニア中央新幹線の工事が始まる。工期は7年から8年と設定されている。路線の大半が地下60mに軌道が設置される予定だ。これまた冨士機の得意とする工法が、存分に活かされることになる。山岳地帯で採掘された残土は、そのまま活用される。都心部品川~神奈川県区域が2,000万m3、岐阜県から名古屋の間で1,500万m3の合計3,500万m3の汚泥処理が発生するとみられる。外環状4路線の3.5倍の量である。単純に計算すると、2,100億円の金額になる。
この新幹線工事に対して藤田社長は、意外と淡々としている。「獲らぬ狸の皮算用をしても始まらない。来るものは来るという姿勢で臨む」という考えだ。まー、実績のうえでの余裕と言えるのかもしれない。
それよりも、次の展開を練っている。「この中性化固化材を駆使した工法を、全世界で活かしたい」という別次元の展望である。今回の東京での投資は、この5年で回収するであろう。
(つづく)
<COMPANY INFORMATION>
(株)冨士機
代 表:藤田 以和彦
所在地:福岡市博多区博多駅東1-10-30
設 立:1972年9月
資本金:5,000万円
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