Yahooニュースでピックアップされたことで火がつき、6月18日現在の再生数が22万4,483回となっている動画『恋するフォーチュンクッキー博多中洲Ver.』。登場するのは、中洲の飲み屋の女の子だけではない。バー、食べ物屋、美容室、那珂川クルーズなどの各業種、明太子発祥のふくや中洲本店、中洲の約8割を占める取扱可能物件があるライン不動産といった企業。さらには、中洲町連合会のお偉い方、博多券番の芸妓さん、中洲の有名ママまで。中洲の顔というべき人たちのオンパレードに度肝を抜かれた。
初めて動画を観た時、「仕掛け人は、さぞ、名のある御仁に違いない!」と、小生は思った。しかし、その御仁とは、なんと30歳の若手ママ。「イマドキの若者は・・・」というトークを、たまに酒の肴にする嫌なおっさんの小生は、頭から冷水をかけられた気分になった。これは、ぜひ1度、ご高説を賜らねば!
<幅広い世代に元気な中洲をPR>
突然のアポに心よく応じてくれたのは、会員制クラブ「リトルガーデン」(第5ラインビル3階)を経営する名平睦美ママ。あどけなさが残る雰囲気からは、この骨太の動画を企画したとはとても思えない。しかし、次第に、店を想い中洲を想う、強い信念を持っていることがわかった。名平ママは、動画を企画するに至った理由について、「ひと言でいえば危機感です」と言うのである。
生まれも育ちも福岡市の名平ママは幼い頃、両親に連れられて中洲に遊びに来ていた。「その頃は、デパートや映画館があって、たいへん楽しい思い出があります」という。しかし、中洲で働き始めた頃には変わっていた。昼間の人通りは絶え、夜は客引きやスカウト、怖いおじさんたちまで出没する。とても子どもや若い娘が出歩く場所ではない。
「自分で店を開く前に1度、銀座を見ておこうと思ったんです」と、名平ママは1年半、東京・銀座のクラブで修行した。洗練された街並みに溶け込んだ洒落た銀座の夜を肌で感じ、中洲が目指すべき方向性を見出した。「お客様は"中洲にある1軒の店"に足を運ばれています。全体が盛り上がっていないと、集合体としての魅力がなくなるんです」(名平ママ)。
6年前、24歳の終わりに小さいながらも中洲に自分の店「リトルガーデン」をオープン。22歳の時、資質が見込まれて雇われママをやったことはあったが、経営者となれば視点も変わった。「知らないから、若い人たちがだんだん中洲に遊びに来なくなっています。『ないといけない』というニーズを作り出すのはたいへんです」。自分の店はなんとか順調にいくものの、中洲の経営者としての危機感は高まっていく。そして、「自分の店だけよければいいわけじゃない」と一念発起。中洲の人々にAKB48の大ヒット曲「恋するフォーチュンクッキー」(恋チュン)を踊らせることに挑んだ。
名平ママの「元気な中洲をみんなに知ってほしい!」という熱意が街を動かした。踊りの指導、動画の構成は「リトルガーデン」の女の子たちが担当、20件以上の出演交渉は名平ママ。若者たちの熱意を受けて、ふくやの川原正孝社長、高級クラブ「ロイヤルボックス」を経営する藤堂和子ママといった名のある方々も協力し、豪華キャストが実現した。ほかの動画に埋もれない「今さら」(地元紙)なタイミングでやったことが功を奏し、中洲のフォーチュンクッキーは注目を集めている。
決して自分の店のPRのためではない。どうしても足りないカットだけ、自分と店のスタッフで埋めた。また、踊りとは関係ないが、健全化への取り組みを知ってもらうため、月1回行なわれている中洲防犯パレードの様子も盛り込んだ。そのかいあって、『安全で元気な中洲』を伝える動画として中洲っ子からの評判もよい。「『楽しそう、行ってみたいな』と思わせるのがゴールですから」と、名平ママは目を輝かせる。第2弾があるかもしれない、小生も踊れる身体になっておかねば・・・。
【長丘 萬月】
<プロフィール>
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
福岡県生まれ。海上自衛隊、雑誌編集業を経て2009年フリーに転身。危険をいとわず、体を張った取材で蓄積したデータをもとに、働くお父さんたちの「歓楽街の安全・安心な歩き方」をサポート。これまで国内・海外問わず、年間400人以上、10年間で4,000人の風俗関係者を『取材』。現在は、ホーム・タウンである中洲に"ほぼ毎日"出没している。
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