サッカーW杯ブラジル大会、日本は初戦、コートジボワールに逆転負けし、重いムードが日本中を包んだ。そして、その試合は中国でも中継された。中国チームはW杯に出場していないが、国内での関心は高いという。
4年前の南アフリカ大会では「青島ビール」や「ハルビンビール」の漢字の広告看板が中継でも映され、今大会のブラジルの競技場のサイドには「中国・英利」と書かれたソーラーパネルメーカーの広告看板が現れている。チームは出場していないのに、広告看板が現れるのは、中国での注目度の高さと経済成長を示す現象だ。
中国はサッカーが強いとは決して言えないが、過去に1度だけW杯に出場したことがある。2002年の日韓大会だ。開催国として日本と韓国が予選を免れたことで、枠が緩やかになったことも影響した。ユーゴスラビア出身のミルティノビッチ氏が監督を務め、中国のサッカー史上初のW杯出場へ導いた。本大会ではブラジル、コスタリカ、トルコと対戦し、1得点も挙げられず3連敗。それでも、ミルティノビッチ氏は「尊敬すべき指導者」として中国メディア界では現在でも一目置かれている。
多くの東南アジア諸国(インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイなど)は、代表チームがW杯に出場できるレベルにはないものの、サッカーに対する注目は高い。そんな国々のサッカーファンが、自国は出場できないが、国際大会を視聴するにあたってどこを応援するのか・・・。それが圧倒的な支持率で「日本」だと言われている。アジアからは他の複数の国も出場するが、「東アジアの先進国・リーダー」として羨望され、国際大会では東南アジア諸国の多くの人が肩入れするのだという。
しかし、対象的な反応を見せるのが「中国人」だという。中国は文化面や技術の緻密さ、食文化の豊かさなどで日本人をある程度評価する姿勢がある一方で、スポーツに関しては手厳しい。今大会、初戦の日本敗戦は、中国版ツイッター微博で、嬉しさの声で埋まった。「小日本去死吧,哈哈哈(日本のクソ野郎、討ち死に。ハハハ)」「日本狗,回家去吧(日本の犬、帰りやがれ)」「打死小鬼子赞(日本のバカどもが負けた。やったね)」といった言葉が並んだ。日本チームをかばう声も一部掲載されているが「你可以移民日本(てめえは日本に移民しろ)」と書かれる始末。コートジボアールが勝ったことへの賞賛よりも、日本が負けたことへの喜びが表現され「アンチ日本」の多さを物語っているのだ。
ネットほど強烈ではないが、一般市民の日常コミュニケーションも同様のトーンになっているという。日本では「スポーツと政治は別もの」という考え方が根本的に根付いているが、中国では、スポーツファンの思想ですら激しい偏りが生まれている。
【杉本 尚丈】
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