<営業活動の攻め手を欠くデータの非公開>
経営者の方々からすれば、驚かれるかもしれない。でも、ガリヤには「単年度ごとに取引先の売上げ数値をデータベース化したものがなかった」と、M氏は証言する。というか、長澤社長はスタッフに数値や会計を全く見せなかったそうだ。
前出のM氏は語る。「営業データを見せてくれと言っても、長澤社長は見せてくれない。代わりに渡されたのは請求書の控だった。これにまず驚かされた」。
「それにはありとあらゆるクライアント名が載っていたが、この企業はなぜアカウントがなくなったのかと聞いても、社長から返ってきた答えは『何ででしょうね』。創業から20数年も経過しているのに、そんな検証が全くなされていなかった」(M氏)。
2007~08年頃から経営状態がさらに厳しくなり、営業スタッフの出入りも激しくなった。ただ、新人スタッフでも営業経験があれば、顧客管理のデータを分析して、出稿売上げによってランクを分け、それぞれにあった営業のかけ方を工夫するのは当然のことだ。
ところが、長澤社長は経営者として自らそのデータを公開しないのだから、クライアント毎にいろんなアプローチの掛けようがない。
スポンサーの側にしても、企業毎にニーズは違うわけだから、そのための企画内容や広告表現、枠のスペースは変わっていく。営業スタッフにとって、そのための下敷きがないのでは、攻め手を欠いてしまうのは当然だ。
「入社して2週間くらいは、言い合いばかりしていた。すると、社長に『あなたに文句を言われるために来てもらったわけじゃない』と言われた。最後の女性スタッフがあと1週間で辞めるからと頼まれ、仕事を引き受けることにしたが、そこまで酷いとは思わなかった」と戸高氏。
顧客リストと渡されたのはA4用紙4~5枚。長澤社長からは「Macしか使わないから、退職者からウインドウズのPCデータも貰っても仕方ない」とか、「なぜ社内用のPCがないか」と尋ねても、「みんなが粗末に使って壊れる。自分のPCは大切に使うし、自宅でも仕事もできる。私も自宅で仕事をしてるから」と、仕事でも噛み合ない。
戸高氏はガリヤの窮地を見て「何とかしよう」と真摯に仕事に取り組んだ。ところが、営業するに従って、請求に対して回収できていない実態も知る。
「とにかく広告料金をもらえていないケースも多かった。(スポンサーとの間で)契約書を交わしておらず、中途半端に出稿のゴーサインを出して広告を掲載していたようだ。スポンサーにも間違いがあるとか、納得がいかないとか言われた」(戸高氏)。
広告の世界でスポンサーの承認なしに出稿することは、明らかにコンプライアンスに反する。それどころか、契約書がないのはビジネスとして言語道断。ましてクライアントの営業データがないことになると、経営資産を持っていないのと同等である。
(当記事は各関係者の証言をもとに作成しています)
(つづく)
【釼 英雄】
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