<「小なれど優なり」をかたちに>
本社を置く福岡そして九州一円のみならず、東京・関西にも支店・営業所を擁し、事業展開する三軌建設(株)。JRグループの一員である同社の特徴を挙げるとすれば、まず軌道工事にほかならない。1つに軌道工事といっても、新設・維持補修とあるが、同社はいずれにおいても多くの実績を積んでいる。福岡市営地下鉄や東京、京都など各地の交通局からの地下鉄工事、九州新幹線や在来線の軌道工事がその一例だ。限られた空間や電車などが走り続けるなかでの工事には、専門的なノウハウが必要となる。この分野で、同社は圧倒的なシェアを獲得している。また、各地の民鉄にも注力するなど、同社が建設分野でインフラという社会資本の整備の一翼を担ってきたことは紛れもない事実だ。
ただ、現在までの道のりは平坦なものではない。とくに、1980年代には当時最大の受注先であった日本国有鉄道の解体によって、業界が再編。大きな影響を受けた同社も、試練の時代が続いた。人員の削減やオーナー企業からグループの1社という組織会社へと、同社の体制は大きく変化。そうした苦難のなか、生き抜くために自社の技術力をさらに向上させたことで、他社が真似できない水準へ成長した。これは、同社が従来から掲げてきた「小なれど優なり」という経営ポリシーにも表れている。JRグループの一員であるとはいえ、同社は福岡を礎とする地場企業であり、大手企業に対して事業規模では敵わない。ただ、小さくても差別化された特色があれば勝ち残っていけるという思いが込められている。これを胸に、自社が勝てる市場を選択し、勝ち続けてきたことが現在の基盤へとつながったのだ。
<支えるのは豊富な人材教育制度と連携力>
同社の特長は、軌道工事に関する高い技術力だけではない。JRグループ企業として、地場同業者のなかでも有数となる、豊富な人材教育システムおよび福利厚生を完備。過去には、人材の採用をストップしていた時期もあるが、現在は定期的な新卒者および中途採用を行なっている。新卒者には手厚い研修制度を設けるほか、地場有数の建設企業で経験を積んだ中途採用者においても、資格取得などといった評価制度を設けている。
社員は約240名で推移しており、試練が続いていた時期と比較すれば、技術者の層は厚みを増していると言えるだろう。堅実経営を貫いてきたなか、より一層の強固な基盤形成を目的として、技術者育成は常に課題として挙げている。こうした人材教育システムは、若手社員の離職が多い建設業界において、対外的なアピール手段になる。社員の定着率の向上を図りつつ、豊富な経験を持つ社員の再雇用も進め、全体的な人材能力の引き上げを目指している。
これまで、JRグループとの連携力アップなどから、社長を含む人材の受け入れなど関係性の強化を進めてきた。多くの工事を受注するJRグループを理解した社員がいれば、より効率的な事業活動が可能となり、それは実際に数字として現れている。
また、近年業界が抱える問題として職人不足がある。とくに、厳しい経営環境下において下請・職人などとの関係性を反故にしてきた企業にとって深刻な問題だ。同社は、苦難のときを乗り越えてきた社員同様に、協力会社と歩を進めてきたことで、この環境下においても安定した施工能力を保有している。
自社の技術力には高い自負があるが、現在の基盤へと導いてくれたのはJRグループ、そして協力会社など多くの支えがあったことを深く認識している。だからこそ、苦難に立ち向かっていったときと同様、今後も生き残っていくために多方面との関係性を強化し、ともに支え合う姿勢が続けられているのだ。
(つづく)
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:江村 康博
所在地:福岡市博多区東光寺町1-13-5
設 立:1962年1月
資本金:1億1,000万円
TEL:092-441-5421
URL:http://www.sankikensetsu.com/
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JRグループという信頼と全国屈指の軌道工事における技術力を有する企業。豊富な教育・評価制度を設け、人材教育に注力するほか、インフラという生活に欠かせない分野で高い存在感を示している。
<PROFILE>
江村 康博(えむら・やすひろ)
1951年12月生まれ。76年4月、日本国有鉄道入社後、九州旅客鉄道(株)およびJRグループの役員を経て、2008年6月に同社代表取締役に就任。
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