<幾度か訪れた危機をチャンスに変える>
2013年10月には、3番目となる熊本工場が新設された。同工場は、熊本市の南部に位置する城南工業団地にある。敷地面積にして約4万m2。段ボール工場は稼動中、製造機械の轟音が響く。工場へのトラックの出入りも多い。近年、福岡工場の周辺は、新たに駅ができ、福岡市のベッドタウンとして住宅開発が進んだ。そこで同社は広大な土地があり、深夜まで稼動しても問題のない場所に新工場を検討。熊本県の工業団地整備事業で、道路アクセスも優れている当地を選定した。城南工業団地は、高速インターに近く、熊本県南部から、鹿児島・宮崎にかけての南九州への交通に利便性が高い。
段ボールの生産は、生産ラインをコンピュータで集中管理させ、大量生産にも対応している。各工場にはコルゲートマシンという製造機械が設置されている。これは、原紙を張り合わせ段ボールシートをつくることができるもの。九州には29台のコルゲートマシンがあり、そのうち3台を同社が所有している。コンピュータ管理による受注から生産計画・設備コントロール・物流計画までをリアルタイムな把握が可能な独自の集中システム「COA:Case On-Demand Application」を構築。多様な顧客の要望に応えることを可能とした。
段ボールは災害に際しても、大いに役割を発揮している。07年7月に発生した新潟県中越沖地震では、自動車内で布団もベッドもない状態で長期間寝泊りした被災者が多かった。その際、脚などにできた血栓が肺動脈などに詰まると、最悪の場合死に至る「エコノミークラス症候群」を発症した人が多く、大きな問題となった。
その対策として、児島社長が理事長を務める「南日本段ボール工業組合」は、13年12月に、避難所に段ボール製のベッドやトイレを供給する防災協定を佐賀県と締結した。地震や風水害などで被災地域に対する段ボールベッドの提供を進めており、11年3月11日に発生した東日本大震災でも、1,000個のベッドが提供されるなど、活躍の場を全国に広げている。
段ボール業界は、技術革新が他業種に比較して少ない特徴がある。紙を素材としているため、マーケット構造が短期間に変化することも少ない。しかも、大手の寡占状態に必ずしもならない点は大きい。地場でも十分市場に打って出て戦えるということだ。創業以来、幾度か見舞われた危機に際して、同社は乗り越えて発展してきた。
「一般的には、企業の力は財務や過去の利益率や市場占有率などが指標となりますが、過去の弊社の歴史を振り返ると、一丸となって乗り越えてきた。1つの方向にみんながどれだけ進んでいけるのか。数字に見えない会社の底力は大事だと思います。危機を危機とするのか。それともチャンスに変えるのかだと思います。それが会社の地力でしょう」と、児島社長は力強く語ってくれた。
(了)
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:児島 圭多朗
所在地:福岡市博多区博多駅東1-17-25 KDビル
設 立:1959年8月
資本金:4,200万円
TEL:092-452-0631
URL:http://www.kdb.co.jp/
<PRESIDENT PROFILE>
児島 圭多朗(こじま・けいたろう)
1960年12月、福岡市生まれ。上智大学経済学部卒業後、83年4月に丸紅(株)入社。92年11月に同社を退社し、同年12月に児島段ボール(株)入社。93年7月同社専務取締役を経て、2007年6月、児島段ボール(株)代表取締役社長就任。10年7月、児島洋紙(株)代表取締役社長就任。
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