<経営者としての責任を幹部に押し付ける>
戸高氏は入社時点で資金面が苦しいと聞いていたので、「自社ビルを売却し、引越しましょう」と何度も提案した。しかし、長澤社長は 「このビルはガリヤを守ってくれるの!」との発言とともに翻意させることはできなかった。だが、そんな社屋ビルも、2012年夏には人手に渡る。
13年になると、全社員一律で25%の給与カットが始まった。すると一気に退職者が出始め、アルバイトのなかにも会社に出てこなくなるものが現れた。その時、戸高氏が「給与を払ってもらわないとみんな辞めますよ」と言うと、「辞めるって人間を説得するのが幹部社員の役割でしょう。大体、売上げがないのが会社の経営を圧迫していることを皆に認識させなさい」と、長澤社長は言い放ったという。
そして、会社の窮状に対してかけられたのは、「たとえ会社が潰れても、あなたたちは国が補償してくれるのよ」だから、経営者としての自覚は微塵もない。しかし、そこまでの原因を作ったのは、長澤社長本人である。ここまで来れば、自分の責任を完全にスタッフに転嫁している。
さらに労働基準監督署が入り、元社員による労働調停も提起された。13年3月分より全員の給与が停止し、未支払い分は1万5,000円、2万円程度に分割して支払うことになった。戸高氏、T編集長を含めほとんどが5月末でガリヤを後にした。
NET-IBでは「破綻したガリヤ、元社員の告白」と題した投稿を掲載した。これは戸高氏自身が 2009年から13年にかけての状況を克明に記したものだ。それに対し、「腑に落ちない内容がある」と、反論の投稿もあがっている。
それには「T編集長やY副編集長が実質的に営業戦略や企画立案を仕切っていて、長澤社長も一任していたはずです。Webコンテンツや動画配信などのクロスメディアも両氏が取り組んだはずです。ただ、軌道に乗れなかった戦略ミスです」とあった。
しかし、長澤社長にはWeb事業を一度失敗したことで抵抗感があり、頑に拒否していたのは、多くのスタッフが認めるところだ。それを再度、挑むとは考えにくい。
戸高氏も「この時期の誌面は充実し、クライアントや読者も評価していた。売上げも近年では最も高い。軌道に乗れなかったのは、過去の負債が膨大で、返済額が経営を圧迫していたからだ。方向性は決して間違っていなかったと思う」と証言する。
一方、「幹部数人が辞めた理由の1つは2人(T編集長とY副編集長が)は、社内恋愛をして組織を乱し、Y副編集長の気に入らないスタッフは、T編集長が長澤社長にお願いし退職させていたこともあります」との反論があった。
これについて戸高氏は、「たしかにT編集長とY副編集長は仲は良かったが、その事が組織運営に支障を来たすことはなかった。決して一枚岩ではなかったが、中核メンバーは編集長を中心に士気も高く、強くまとまっていた」と語る。
たとえ、社内恋愛があったにしても、その前から長澤社長を中心とした組織的に体を成していないのだから、それをスタッフの離散を招いた根本理由にするには無理がある。
(当記事は各関係者の証言をもとに作成しています)
(つづく)
【釼 英雄】
※記事へのご意見はこちら