韓国の電気料金は、日本の電気料金の半分か3分の1程度である。今回は、韓国の電力需要をはじめ、なぜそのような電気料金体系になっているのかなどをお話したい。
2000年度の初めに韓国政府では、2000年度後半の電力需要は年1~2%ほどの緩やかな増加の後、飽和状態になるだろうと見込んでいた。しかし、その予想は見事に外れ、電力需要は2000年代の半ば頃から急激に増え始め、2010年には年10%の伸び率を示すことになった。
OECD加盟国のなかでも、このような趨勢で増加をしている国はどこにもいなかった。長引いた景気低迷の影響があったのか、ほとんどのOECD加盟国は2000年度からの10年間、電力需要の増加は見られなかった。韓国と一番類似している日本でさえ、その期間中2%の増加を示しただけである。
しかし、韓国はその10年間に、合計80%の需要の増加を記録した。伸び率だけを見ると、後発の新興国でしかであり得ない数字である。
その結果、韓国の1人当たり平均電力消費量は韓国より国民所得の高いほとんどのOECD加盟国より多くなっている。
とはいっても、実際国民全員が所得水準に比べて電力を湯水のように使っているわけでもない。むしろ実情は、その反対かもしれない。
電力需要は、大きく分けると家庭、サービス業、製造業に分けることができる。
家庭の電力需要は全体の15%を占めるに過ぎない。この数字は、OECD加盟国の平均割合である30%に比べると、半分くらいしかならない。家庭向けの電力需要の増加も微々たるものである。
これに比べて製造業が全体の電力需要のなかで占める割合は55%で、OECD加盟国の平均のほぼ2倍になっている。サービス業は製造業の次で、30%くらいの割合になっている。韓国の製造業またはサービス業が1ドルの製品を生産するのに使っている電力は、OECD加盟国の2倍、日本の3倍になっている。
さらに、最近になって製造業とサービス業の電力需要の増加は著しい。製造業とサービス業は、電力需要のなかで占める割合が高いだけでなく、増加率においても電力需要の増加を牽引しているようなかたちになっている。もちろん製造業とサービス業の電力需要を抑制するのは、容易なことではない。需要を減らすために工場の稼動を中断したり、営業時間を短縮したりするのは難しいからだ。とくに韓国の経済は、"もの"を製造して輸出することで経済が成り立っているし、サービス業が占める経済活動のウェイトも高いので、むやみに需要を押さえ込むこともできない。
問題は製造業とサービス業において、電力使用の方法で、大きな無駄が発生していることである。
最近、原油高で石油と天然ガスの価格が高騰することによって、石油とガスの代わりに、相対的に価格の安い電力にエネルギーがシフトするエネルギー電力化現象が進んでいる。その類型は大きく分けて、熱エネルギーの電力化と暖房エネルギーの電力化である。熱エネルギーの電力化とは、生産工程上で必要な熱エネルギーが石油、ガスなどから、電力にシフトすることを指す。工場で何かを加熱、または乾燥するときに使っていた石油、ガスを電力にシフトしたり、農村のビニールハウスで使っていたエネルギーを油から電力に切り替えているのが良い事例である。原油高の余波で最近数年間、製造現場で電力の需要が増加したのは、これと関わりが深いかもしれない。
一方、暖房エネルギーの電力化現象は、エネルギー源が油類から電力にシフトしていることを指す。暖房エネルギーの電力化も、家庭よりも製造業やサービス業で顕著に現われている。最近、ビルなどに急速に増えているエアコンまたは電気温風器は、良い事例である。これによって2000年度の半ば頃から、冬場の電力消費が急ピッチで増えている。もちろん家庭でもホットカーペットなどの暖房器具を使ってはいるが、あくまでも補助的な手段であって、家全体を電力で暖房をするケースは珍しい。
問題は、熱エネルギーの電力化と暖房エネルギーの電力化によって、エネルギー効率が50%以上落ちるという点である。石油またはガスの代わりに電力を使うと、結果的に2倍の燃料が必要になると言う点である。たとえて言うならば、熱エネルギーの電力化と暖房の電力化は、水道水を使って洗濯をしていたものを、ミネラルウォーターを買ってきて洗濯をするのと同じことになるのだ。
もちろん経済が成長と所得の増加が進むにつれて、石油やガスより利便性の高い電力を好むのは、一般的な傾向ではある。しかし、いくら利便性があっても電力を使ってはいけないところに電力を使い始めると、需要は予想外の増加を示し、その結果、ブラックアウトを心配することになるのは当然の成り行きである。
その結果、最近になっては強制的に電力需要を抑制する政策を打ち立てないといけない状況にまでなっている。
(つづく)
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