<独りよがりの経営では企業はもたない>
経営者には論理的な思考、潮目を読む力、創造力、倫理感などが求められる。だが、どんなに優秀な経営者でも、戦略運営の過程で「決断するどうか」は非常に迷う。
アメリカ大統領でさえ、重要な政策決定に窮する時は、「占星術師の力を借りる」という話がまことしやかに語られるほどだ。
日本の経営者のなかにも、易や占いを信じる人は少なくない。実際に「四柱推命では、本空亡の期間は判断力がなくなるから動かない」という方もいた。経営者は孤独だから迷いや不安を解消するために、易や占いの力を借りたくなるのはわからなくもない。
長澤社長も東区にある岩清水不動尊聖不動院に通って、会社経営に関する相談もしていたようだ。M氏によると、「(別の)占法関係者が社屋に出入りし、日曜日にお祓いみたいなことをしていた」。これは戸高氏も記憶にあるという。
M氏は「社長が占法関係者にスタッフの面談をさせたこともあった。『あなたは自分の実力の30%しか力を発揮していない』と言われたスタッフもいた」と証言する。
長澤社長も、当初は占法関係者の言うことを素直に受け入れていたようだ。だが、業績が一向に回復しないとなると、その関係者との付き合いも断っている。
「社長は私のようなアドバイザーの助言は全然聞かず、占法関係者の話はすすんで聞いていた。でも、それで売上が伸びなかったため、占法関係者との付き合いもあっさりやめた。もう誰も信用できなくなったのではないか」(M氏)。
長澤社長はエルフ時代から情報誌の編集長として名を馳せ、ラジオのパーソナリティやさまざまなイベントに参画するなど、若いOLの間ではリーダー的存在だった。ガリヤを設立してからも、自分の考え方は決して間違っていないと突っ走ってきた。
ところが、そうした性格は時として仇になる。経営者としての自分を客観視することなく、周囲の意見も聞かない「独善家」になってしまうからだ。
どんな企業でも「社員」は不可欠だ。その上司に勇猛果敢な行動力を持つ「課長」がいて、さらにその上に優秀な指揮統率力を備えた「部長」がいる。ただ、ここまでは平社員からキャリアアップできるが、これだけで企業は成り立たない。
戦術を企画し管理できる「取締役」が求められるし、市場構造を見て勝てる戦略を立てられる「最高経営責任者」によって、企業の運命は決まる。社員と経営者は人財として同じではないが、部下のことを思いやってこそ、最高の経営者なのである。
これまでの多くの証言から見ても、長澤社長にそうした資質は見られなかった。ガリヤの破綻は独りよがりで、自己中心的な経営者が引き起こしたと言っても過言ではない。
(当記事は各関係者の証言をもとに作成しています)
(つづく)
【釼 英雄】
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