非上場でありながら岡山の名門企業として一世を風靡した同族経営の(株)林原の破綻から3年。林原の名前を有名にしたのは抗がん剤のインターフェロンであり、トレハロースであった。特にトレハロースは食品や化粧品業界では知らない人がいないほど、食品や医薬品など様々な分野に天然甘味料として使われており、安価なでんぷんからの開発は不可能と言われていただけに、トレハロースはまさに林原の看板商品であった。岡山県において水飴の販売会社からバイオ企業に成長した林原の名は、上場企業以上の影響力を持つ存在であった。
昨年7月、弟で専務であった林原靖氏が自伝小説『破綻 バイオ企業・林原の真実』をワックから出版。それに触発されるかのように、兄であり社長であった林原健氏も今年5月、『林原家 同族経営への警鐘』を日経BP社から発刊し、兄弟揃踏みによって林原の倒産に至る経緯の一端が明らかにされることになった。
債務超過が露呈したため、私的整理の一種である事業再生ADRによる再建を目指したが、金融機関の足並みが揃わず断念。2011年2月2日、やむなく東京地裁に会社更生法の適用を申請し、受理されて事実上倒産。負債総額は1,400億円にのぼり、林原健社長と弟の靖専務は責任を取り、同日付で退任した。林原の社長である林原健氏は、会社にはほとんど出勤しないことや、メセナに力を入れるなど、そのユニークな経営が世間の注目を集め、当世を代表する経営者の一人としてマスコミにも頻繁に取り上げられるようになった。それを財務面から支えたのが専務の林原靖氏であった。
林原元社長によって発刊された『林原家』、弟で元専務であった林原靖氏の『破綻』に共通しているのは、「たとえ同族経営であっても決して間違ってはいなかったし、むしろ同族経営であったが故に、長いスパンでの商品開発が可能だった」との自負であった。
倒産に至る経緯については同情すべき点はあるが、あくまでも兄弟2人の自伝小説であり、一方的な見解を述べている面は否めない。
日本国内に「ごまんといる非上場の同族企業」がこれから先も生きていくにはどうすれば良いのか、銀行と如何にうまく付き合っていけば良いのかについて、林原健氏の『林原家』を通して、検証してみることにしたい。
(つづく)
【北山 譲】
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