<限定的だった待機児童ゼロ>
新年度に入り、「福岡市は待機児童ゼロを達成した」などと発表した高島宗一郎福岡市長。全国的に報道されたため、福岡市の待機児童はゼロだと思っている市民も多いはずだ。しかし、事実は異なる。5月1日時点で福岡市の待機児童は61人。4月、転勤などで福岡市へ転入してきた世帯が増えたためだ。6月25日に開かれた福岡市議会の一般質問で、この件について、福岡市民クラブの調崇史市議が追及した。
福岡市の「待機児童ゼロ」は、長く見積もったとして、1カ月も続かなかった。高島市長の言動に関する問題性を指摘した調市議は、横浜市を事例にあげた。それによると、待機児童ゼロを達成した横浜市は、転入を見越し、5月に入ってゼロが達成できたのを確認してから発表したという。また、調市議の質問に対し、所管のこども未来局は、転入世帯にともなう待機児童の増加は予測できていたと答弁した。調市議は「確信犯的な市民ダマし」と、高島市長の言動に苦言を呈した。
つまり、高島市長は、すぐに待機児童が出るとわかっていながら待機児童ゼロを喧伝したのである。さらに、森まさこ少子化担当大臣に直接電話で報告し、森大臣がマスコミの前で述べるなどして全国的に広まった。その後、森大臣は福岡市を視察。高島市長自ら案内したという。ここまでやれば、福岡市は「待機児童ゼロの政令市」として、一気に名声をあげることになるだろう。しかし、実際は違う。例年、予見できる転入世帯の分まで待機児童対策ができておらず、1,000人以上の未入所児童も含めて、今後も取り組みが必要というのが実態なのだ。
タチが悪いことに、61人の待機児童がいることを知っているはずの6月8日、高島市長は、福岡市内で開いた政治資金パーティーでも、このまやかしの待機児童ゼロに言及していた。「確信犯的な市民ダマし」が横行していたわけである。市議会の答弁で、「今回4月1日時点で待機児童0を達成できたことは、保育所整備を積極的に進めてきたことの成果」とした高島市長だが、次の選挙を意識してか、自分を良く見せようという魂胆で墓穴を掘ったかたちとなった。
さらに高島市長は、「未入所児童の解消を目指す」としていた自分の選挙公報を、「公約ではない」という発言までしている。次々と、ウソが暴かれている高島市長。今後、福岡市民としては、ダマされないよう注意を払う必要がある。
【吉井 陸人】
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