東京で24日から始まり、10月からは九州国博でもスタートする「故宮博物院展」だが、東京開幕に先立ち、ちょっとしたトラブルが発生している。九州エリアでも当初、印刷され配布されたパンフレットや告知には「台北國立故宮博物院展」となっていたが、いつの間にか「台北故宮博物院展」と、『國立』の単語がこっそりと外され、そのことに台湾マスコミや当局が気づいたことが発端だった。
「國立」が外された経緯については、「『中国』のことを気にして」という事情があることは明白だ。「中国サイドが気づかなければ日本主催側としてもうまくいくはずだったのだろうが、何らかの形で「中国サイド」が気づいた可能性もある。「國立故宮博物院展」の「國立」とは「中華民国」を指す。しかし、中国(中華人民共和国)は、台湾を「一地域」としており、「中華民国」の存在を認めていない。「國(中華民国)立故宮博物院」とは、台湾内での名称だ。台湾を取るか、中国を取るか・・・しかし、この展示会はなんとか成功させたい。日本主催者側としても苦渋の文言選びとなったようだ。
台湾在住のあるジャーナリストは「この件はいくつかのシナリオが考えられる。『本当に中国側からクレームが来た』『主催者側で、中国に気づかれたらやばいぞ、という声が出た』、あるいは『はじめだけ國立の単語を入れ、台湾側を納得させ開催を確定させ、そのうちに単語をフェードアウトさせ、うやむやにする』、このどれかではないか。それにしても、こっそり外したことが台湾側に気づかれてしまう、という最悪のストーリーとなってしまった・・・」と指摘する。
一部宣伝ポスターで「國立」の2文字が使用されていないことについて、馬英九総統は展示会の「中止」も視野に入れ、日本側との厳正な交渉を指示した。ポスターや告知は「國立」の文字を再現させるなど対応し、結局は、6月24日に東京国立博物館で開幕した。しかし、当初来日予定だった馬英九総統の夫人・周美青氏は開会式に欠席。東京国博の銭谷館長は、セレモニーで謝罪の言葉を述べた。
東京での開会式を欠席した周美青氏については、10月の九州国博での出席を打診すると見られている。
しかし、事態はそう簡単には収まらない可能性も高い。「國立」の文字を復活させたことで、今度は「中国側」がどういう対応にでるか。また中国側の意見を飲んだ場合、台湾側はどう反応するか・・・。板挟みで波乱続きの故宮博物院展、果たして、福岡では無事に開催されるのだろうか。
【杉本 尚丈】
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