江川会長は創業前、大学病院で衛生検査技師として臨床検査業務に携わっていた。当時、医療機関の高度化が進む一方で人材確保と設備導入が追い付かず、正確かつ迅速に大量の検査を行なう臨床検査会社が求められていた。67年は法整備により、医療機関の臨床検査が民間でも受託できるようになった年でもあった。
江川会長は「認定基準こそ厳しかったものの、開業も自由で広さや場所もとくに規制がなかったが、総額100万円の検査機器は出世払いで調達していました」と創業時の苦労を語る。それもそのはず、当時のサラリーマン月給が平均2万円と考えると大変な買い物だ。開業後は以前からの人脈をたどり、多くの医療機関を訪問。臨床検査のニーズも増加傾向にあったことから順調に売上を伸ばしていった。
そんななか、ある病院からの不渡り手形で、突然資金繰りに行き詰まってしまう。このときの経験から「経営にはそれなりのリスクがある。決して近道はない。それからはどんな小さな仕事も進んで受けるようにしました」と江川会長は言う。
69年には法人化し、70年に(有)福岡臨床検査センターに社名変更。このときに取り組んだ(1)事務処理能力アップのためのコンピューター導入(手書きが当たり前だった当時、見やすく誤記のない報告書を医師に提供)、(2)衛生検査所としては初の自動分析機導入(同時に4項目の検査が可能となる)、(3)他社に先駆けて開始した血液のセット検査(臓器別、疾病別に必要な検査項目をまとめ、それをセットとして検査する)の3つの施策が、同社を躍進させた。
なお、同社社員からは「会社に来たくないと思ったことがない」「名前をしっかり覚えてくれている」「同じ目線で話をしてくれる」「休暇の取り方にも気を遣ってくれている」などという声が挙がることから、江川会長の人柄の良さが感じられる。
(つづく)
<COMPANY INFORMATION>
代表取締役会長:江川 洋
所在地:福岡市東区松島3-29-18
設 立:1969年7月
資本金:2,000万円
TEL:092-623-2111
URL:http://www.crc-group.co.jp/
<PROFILE>
江川 洋(えがわ・ひろし)
1940年7月、中国・大連市生まれ。佐賀県浜玉町育ち。唐津東高校卒。九州大学医学部附属衛生検査技師学校(現・九州大学医学部保健学科)を卒業後、同大学中央検査室勤務を経て、67年にセントラル医学研究所(現・(株)シー・アール・シー)を創業。現在、CRCグループの会長を務める。趣味はゴルフ、観劇、読書。
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