「店がきれいにリノベーションされているから、契約の更新時、値上げの要求か立ち退きを迫られるかも。これはラオスの常識」――とは、ラオスに長期滞在しているある日本人が、私に語った言葉だった。
ラオスは現在、富裕層の間で飲食店をオープンするのがブームである。
富裕層は、安定的な家賃収入で日々の収入が劇的に増えており、大きな豪邸に住み、15万ドルを優に超える高級車を即金で購入。そして周辺国への買い物三昧と、急激に経済発展したラオスのこの世の春を謳歌している。
彼らは、物欲に関わるさまざまな物のほとんどを、お金で手に入れることができる。しかし、すべてを手に入れてくると、今度はお金では手に入れにくいものがほしくなる。それは、人から認められたいという欲求――「承認欲」が出てくるのだ。
だが、いくらお金があっても、こればかりは簡単には手に入れることができないことができない。では、どうやって手に入れるか――?
それは、ビジネスで成功するしかない。
ビジネスで成功する――!?
ラオスの富裕層はそもそも、偶然先祖から代々受け継いだ土地があり、その土地が偶然ラオスの発展にともない資産価値を持ち始めた。もともとラオス人は持ち家率が90%以上あり、そもそも土地が上がる需要がなかったのだが、経済発展にともない社会が成長してきた結果、ビジネスや居住のための土地が必要になった。そのため、発展にともない外国からの投資が増え、外国人の居住が増え1戸建て1,000ドル以上の家賃収入を得ることになった。
現在、今まで安定的な家賃収入のみを得ることしか行なってこなかったラオスの富裕層が、承認欲を満たすためにビジネスで成功することを目指し、飲食店を始めている。しかし、資本はあるがビジネス経験は皆無。さらに、飲食店経営のノウハウはゼロ。これでは、そう簡単にうまくいくはずがない。
金のかかった内装、家賃の恐ろしく高いメイン通りの広い物件、そして異常に多いスタッフ――。それなのに、異常に安い価格設定に加え、飲食店にとって最も大事な料理の味は......。コメントは控えさせていただきたい。
そういった飲食店が毎月のように出店し、1カ月も持たずに閑古鳥が鳴き、開店休業状態となっている。プライドがあるからお店自体はつぶさないのだが、たまに店舗に行くと、店内で複数のスタッフが寝ている。そして久しぶりの来た客に驚いたように起きるが、普段客がいないため、材料の仕入れもなく、メニューに記載されているものはほぼ売り切れていて、結局、何も食べずに店を出る羽目になる。
そんな飲食店が、ラオスの首都・ビエンチャンには、数えればきりがないほど多い。
ラオスでは、日本人にとっての競合はほとんど存在しない。そのため、日本人が真面目に飲食店を出店すれば、私は必ず成功できるという自信がある。
(つづく)
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