植民地時代に日本に収用され、第二次世界大戦中は日本軍の訓練場、野営場として、さらに戦後は米軍基地として使われた韓国・釜山市の「キャンプ・ハヤリア」跡地が市民公園として整備され、5月1日、現地で開園式が行われた。姉妹都市である福岡市からは中園政直副市長が出席した。
4月16日珍島沖で発生した「客船沈没事故」の影響で、今回の開園式は中止になる可能性もあったという。
ある韓国人通訳者は「悲惨な事故の影響で韓国中の雰囲気は沈み、予定されていた様々なイベントが自粛傾向にある。当初、市民公園の開園式にも『中止』の声もあがったが、『海外からの来賓も既に多数招聘しており、中止にすると国家レベルの公園の行く末に影響を与えかねない』という意見も出され『派手な形では行わない』という形で折り合った」と話す。
約2,500人が参加した開園式は派手なファンファーレ、演奏などが極力抑えられ、淡々と進められたという。韓国では多くの日本人ランナーが参加しての「慶州さくらマラソン」が4月5日に開かれたが、日本から出向いた大会関係者は「開催が2週間遅かったら、中止になっていたかもしれない」と話す。
釜山市民公園は、都心部の公園としては国内最大規模で、敷地面積はドーム球場約8個分の53万m2だ。戦後は米軍が2006年まで使い続け、2010年に返還された。歴史的意義も濃く、敷地内には歴史館も設置され、また福岡市が設計した日本庭園もある。
式典では許南殖釜山市長が「釜山の新しい名所として、今後、世界一流の公園にしていきたい」と挨拶した。
釜山は、「国際級」規模の国際映画祭や花火大会も開催するなど「文化都市」としての認知度が高い。新しく誕生した市民公園は繁華街の西面(ソミョン)に近く、更なる観光名所のラインナップとして期待が高まる。
前述の韓国人通訳者は「釜山は『世界レベル』を意識して文化イベントを開催している。政治の中枢・ソウルに勝つためにはその方向性しかないと割り切っており、『中途半端なレベルは不要だ』と要求も明確。今後も先鋭的な文化を取り込んだイベント、施設づくりが展開されるだろう」と話している。
【杉本 尚丈】
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