固定価格買取制度(FIT)がスタートして、2年を迎える。この間、住宅用、産業用の太陽光発電の普及は著しく、都会、田舎関係なく設置が進んでいる。普及が進むにつれ、市場原理が働き、コストダウンによるパネルの値下がりなどもあり、太陽光についていえば、当初40円(10kw以上)だった買取価格は現在32円まで下がっている。では、現在、最も買取価格の高いのは何か。それは20kw未満の小型風力で「55円」。これは制度開始から変わっていない。
普及が進まなければ価格は下がらない。1基の価格が高額であることも普及が進まぬ理由だが、どうやらそれだけではないらしい。小型風力発電の設備認定には、海事協会の設計認証が必要となる。その設計認証の中身は、設計部分に加え8カ月以上の運転実験をクリアする必要があるのだが、こともあろうか日本国内には風力試験場がないというのだ。つまり、国内メーカーが小型風車を製造しても、運転実験ができないという理由で、FITの要件を満たさない。
経済産業省は買取価格を決定する際に、日本小形風力発電協会に試験場を建設することを促したとされる。55円はいわば条件付の価格設定だった。しかし、いまだに日本には試験場はない。当初は試験場を建設する方向で調整がされていたが、建設費用が予想以上にかかることから、頓挫している。
この状況で何が起きているか。買取価格55円で発電が可能になる小型風車はほとんど外国メーカーのもの。国内メーカーにしてみれば、悲惨だ。再生可能エネルギーの普及を目指し、製品開発を進めてきた。ようやく製品ができあがったにも関わらず、試験場がないために、55円での売電が行なえないのだ。現状では、小型風力であるのに、大型の買取価格22円での発電しか認められていない。国内メーカーが55円に乗せたい場合は、自前で試験場を作り、実験を行なう、もしくはわざわざ海外まで製品を持って出て、海外の試験場で実験をクリアするしかない。しかし、ベンチャーを含む、中小企業にこんなことができるわけはない。
「小型風力55円。なぜこんな制度を作っているのか」――国内メーカーからの嘆きが聞こえる。試験場まで自前で作るとなると、莫大な費用が発生する。「55円」という高い数字が設定されているから、海外メーカーがそれを目当てに乗り出してくる。この状態が2年前から続いている。「いつかは解決されるだろうと思っていたが、もう我慢の限界に達した」と関係者は語る。
(つづく)
【東城 洋平】
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