ラオスで飲食店をオープンするには、2つの法人形態がある。
まず1つは、外資で行なうやり方。こちらの場合には、まず資本金として10億KIP(日本円にすると1,250万円)が必要となってくる。
もう1つが、ラオス人の会社として飲食店登録するやり方だ。飲食店の場合、ラオス人であれば基本的には法人登録する必要はないが、後々のことを考えて念のため登録するとすれば、5,000万KIP(日本円換算62.5万円)が必要になる。だが、ラオス人名義で登録すると、後々お店が大繁盛した場合に、ラオス人と揉めるケースになることがかなり多い。
さて次に、物件を探すことになる。
ラオスの物件は、1階が店舗で2~3階が住居で、店の幅(道路に面した部分)が4~5m、奥行きは15mといった"ウナギの寝床"のような店舗のスタイルが多い。家賃は場所に依存しており、月250~800ドルの物件がよくある。物件の立地が人通りや車の往来が多い通りに面していると、一見、飲食店としては良さげに見えるが、飲食店の立地によりラオス人の収入がかなり異なり、人通りが多くても意外に苦戦する場合も多々あるため、注意が必要だ。
なお、欧米系の外国人が多い場所は極力避けたい。欧米系の外国人はバックパッカーが多く、彼らがラオスに求めているのは安さであり、まったくお金を使わない。
次にスタッフを募集する。スタッフの募集には、大手求人情報誌に1,500円くらいの費用で告知を掲載できる。ただ、飲食店はラオス人にはあまり人気がなく、スタッフを集めるのには苦労する。
たとえば、1日8時間労働で週1日休み、給料は100ドルで求人募集を出したとしても、ほぼ誰からも応募が来ない。さらには、応募に来て採用しても、約束の出勤時間には来ない。いろいろな事情で勝手に休む。
我々真面目な日本人は、そのラオス人にルールを守らせるため一生懸命努力するが、残念ながらまったく変化がない。最後には、日本人の心の方が先に折れることが多い。
ただ、弊社の場合は、日本人がよく困っている上記のような問題は、まったく経験がない。それはなぜか――?
実は、これらの問題を解決するには、3つのことに気をつければいいのだ。
(1)飲食店では男性スタッフを採用しない
この理由については、公の場所では語れない。
(2)給料を通常の店舗の倍にする
給料が倍だとなかなか辞めない。倍と言っても、毎月の給料100ドルを、200ドルにするだけである。
(3)週休2日で残業をさせない
もし残業をさせたときは、ちょっとしたキンカオ(ご飯食べて)お小遣いをあげる。また、ラオスの正月とサマーバケーションでは、1週間ずつの休暇を与えることも大切だ。
この3つを守れば、安定した人材を確保できる。弊社では、オープンしたときの人材が辞めずに、たくさん残っている。
次に食材を調達する。実はこれは、ラオスでは非常に難しいことなのだ。
あるインド人が、私にこんなことを言ったことがある。「世界で一番おいしいインド料理があるのは、どこの国か知っているか?」――と。もちろん「そりゃ、インドでしょ」と答えたのだが、そのインド人から返ってきたのは、「違います、日本です。肉や野菜、そして果物や全世界から集まる最高の香辛料等、素材の調達が楽な日本が、実はインド料理は一番おいしいのです」との言葉だった。
そのような恵まれた環境にいた日本の調理師は、ラオスに行くと苦労することになる。なぜなら、素材や調理器具がまったくないからだ。なければないなりに、他の物を使用して妥協して創意工夫をすればいいのだが、本物の調理人は慣れていないので、それがなかなか難しい。逆に、家庭の主婦だった人の方が、材料がないならないで、創意工夫して新しい料理をつくれる。現に、調理人ではないが主婦がやっている店で、お昼のランチ時などには入店を断られるほどラオス人や外国人に人気の日本料理店もある。
ラオスで飲食店をオープンするにあたって、これまで述べてきた問題点は、年8%の成長率のASEANでナンバー1の経済発展を誇るラオスでの創業者利得を得るためなら、日本人なら簡単に乗り越えられるであろう。
最後に残った問題点は、飲食店の内装をどうするか......。実はここに、ラオスでの飲食店ビジネスの大きな障害(罠)がある。
(つづく)
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