政治経済学者の植草一秀氏が7月2日、自身のブログとメールマガジンの記事で、安倍政権の集団的自衛権行使を容認する閣議決定に対し、「文字通りの暴挙」と厳しく批判。このことに対する各紙の態度を分析するとともに、安倍政権を打倒する必要を訴え、そのための主権者による運動を拡大・拡散すべきと説いている。NET-IBでは、同記事の一部を抜粋して紹介する。
文字通りの「暴挙」である。
安倍晋三政権が憲法を「なしくずし改定」して、集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行った。権力の暴走を防ぐために存在する憲法を、権力が破壊するときに、主権者にはどのような手段が残されているのか。主権者の「力」によって、この政権=政治権力を取り除くしかない。問われるのは、主権者の「力」である。
メディアの反応は二つに割れた。最後の良心を残して、安倍政権の暴挙を糾弾するメディアが多数存在する一方で、こうした暴挙にさえ賛意を示す、堕落メディア、腐敗メディア、御用メディアが存在する。16社体制のなかで、辛うじてメディアの良心を失わずにいるのが、中日、北海道、西日本の地方ブロック3紙である。安倍政権の暴挙を明確に批判した。
中日:9条破棄に等しい暴挙 集団的自衛権容認
北海道:集団的自衛権の行使容認 日本を誤った方向に導く
西日本:安倍政治を問う 試される民主主義の底力
西日本のタイトルは安倍政権糾弾とは読み取れないが、本文では、安倍政権の対応を厳しく批判した。地方紙のなかには、政治権力に対する批判精神を失っていない社がいくつか存在する。その代表が琉球新報、沖縄タイムズの沖縄2紙である。
琉球新報:解釈改憲閣議決定 日本が「悪魔の島」に国民を危険にさらす暴挙
沖縄タイムズ:[集団的自衛権容認]思慮欠いた政権の暴走
ほかにも、河北新報(宮城)、信濃毎日新聞(長野)、京都新聞、徳島新聞、愛媛新聞などが、安倍政権の暴走を厳しく批判した。
河北新報:集団的自衛権/重い選択、あまりに軽く
信濃毎日:安保をただす 閣議決定へ 独断に異議申し立てを
京都:自衛権閣議決定 9条空洞化の責任は重大だ
徳島:自衛権閣議決定(上) 将来に禍根を残す暴挙だ
愛媛:集団的自衛権閣議決定 平和国家を危うくする暴挙
誰もが、常識の判断で、安倍政権の対応が言語道断の暴走であることが分かるから、さすがに、平時は御用報道を展開するメディアの多くが、今回の安倍政権対応を「暴挙」だとして批判している。ところが、こうしたなかにあっても、安倍政権を絶賛してやまない報道機関が存在する。
読売:集団的自衛権 抑止力向上へ意義深い「容認」
産経:集団的自衛権容認 「助け合えぬ国」に決別を
日本経済:助け合いで安全保障を固める道へ
と、この3紙が安倍政権迎合の姿勢を隠さない。5つある全国紙のうちこれ以外の2紙は、
朝日:集団的自衛権の容認―この暴挙を超えて
毎日:歯止めは国民がかける
全国紙では、朝日だけが安倍政権批判で、読売、産経、日経の3紙は安倍政権礼賛。毎日は腰の引けたタイトルを提示し、安倍政権批判でない。毎日は経営危機に直面した際、創価学会の機関紙である聖教新聞の印刷を委託されて窮地をしのいだと言われる経緯があり、公明党の方針に反する記事を書くことができないのだろうと思われる。
16社体制の悪徳の中心に位置するNHKは、7月2日午前零時からの「時論公論」で、偏向解説者の島田敏男氏が、「憲法解釈変更 その先は?」と題して偏向解説を示した。政府の決定に対する批判的分析を提示せず、政府決定を紹介。論評ではなく、基本的に単なる政府広報である。「あべさまのNHK」の傾向が一段と色濃くなっている。
国民の過半数が反対している「なしくずし憲法改定」は憲法破壊行為である。この憲法破壊行為を、読売、産経、日経の御用三紙と系列テレビキー局が絶賛するから、日本の言論空間では、主権者の声がかき消される。
安倍政権が閣議決定についての記者会見を行ったときに、首相官邸前では1万人以上の市民が集結して怒号をあげた。しかし、日本のマスメディア情報空間を御用勢力=権力迎合勢力=堕落勢力が占有しているため、主権者の声がかき消されているのだ。
日本の民主主義の危機、日本の危機である。この危機を打開するには、安倍政権を打倒して、安倍政権を退場させるしかない。そのための、主権者による運動を拡大、拡散していかなければならない。
※続きは、メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第901号「憲法破壊政権と闘う政治勢力を結集する」で。
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