6月12日、ドイツの太陽光発電プロジェクト開発会社であるフォトボルトデベロップメントパートナーズ社(PVDP)、京セラ、九電工、オリックス、みずほ銀行の5社が共同で、宇久島での営農型メガソーラー発電計画の基本合意に至ったことを発表した。島の4分の1にあたる630万m2に最大出力約430MW分の太陽光発電パネルを設置するという壮大な計画だ。
離島であるから、そこで発電しても送電する手段がないだろう、と思うのは早計である。計画によると60kmの海底ケーブルで九州に送電するという。基本合意では、京セラと九電工とオリックスとみずほ銀行は、PVDPが設立するSPCテラソール合同会社に出資し、九州電力に売電する。役割はそれぞれ、京セラと九電工が建設工事と運営保守を委託され、使用されるソーラー発電パネルは京セラ製のもの、オリックスはSPCに出資という形で協力し、みずほ銀行はプロジェクトファイナンスの取りまとめを行なう。地元の用地取得は宇久島メガソーラーパークサービス(UMSPS)が担当し、用地をテラソールに貸し出す。また、UMSPSは農業の委託も受け、営農支援金をテラソール合同会社から受け取るというものである。
国内最大級のメガソーラー発電施設として話題になった鹿児島七ツ島(運営会社は京セラ。総工費270億円。敷地面積127万m2)の最大出力が70MWであることを考えれば、その規模の大きさが分かるだろう。予算規模も破格だ。総投資額で1,500億円を予定している。予算が多めに見積もられているのは、海底ケーブルと島の開拓のためだと思われる。
何より特徴的なのが、聞き慣れない「営農型」という言葉にある。通常、メガソーラーを設置したら、設置・運営にかかわる事業者のみが収益を得られる。投資したのだから、リターンももちろん事業者に行くわけである。あるいは土地の所有者が賃借料を受け取る程度だ。だが、本プロジェクトは営農型という農業との共生を目指したものなのである。
ソーラーパネルを2.5m~4m程度の高さに設置して、その下で農業を展開する。厳密にはこの表現は逆で、農地の上にソーラーパネルを展開するのである。計画では牧草を育てて島内の畜産業に活用する考えだ。そのため、パネルは通常のメガソーラー発電施設に比べると、パネル間の隙間を広くとってある。日光や雨水を通過させるための工夫だ。牧草を収穫し、それを島内で消費させる。生産活動を担当するためには島に住まなくてはならない。つまり雇用が生まれるのだ。ソーラーパネルの保守なども含めて、雇用の規模はおよそ100名から150名程度になるのではないかと言われている。
(つづく)
【柳 茂嘉】
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