守屋英一氏(以下、守屋) 1番大きな理由は、一般個人がサイバー攻撃の対象になるケースが急速に拡大したからです。そして、残念ながら個人ができる対策は、アンチウィルスソフトを入れるとか、今あるソフトのヴァージョンを最新にするとかに限られます。どんな対策を講じても、現実的にはウィルスへの感染は防げません。
「ウィルスには感染するものだ」そして「IDやパスワードは盗まれるものだ」という認識で対策を考える必要がでてきたのです。
本書の執筆が佳境に入った3月に、担当編集者から急に電話があり、クレジットカードの不正使用の被害に遭った旨を告げられました。本書の説明に従い手続きを行なっていただき、結果的に不正利用された金額は全額返金されました。担当が普段使用しているコンピューターがウィルスに感染、保存されていた情報が盗み出されたものと推測されます。
これは他人ごとでなく、私を含めた読者の皆さんにも、明日起こっても不思議でないことがらなのです。
守屋 すいません(笑)。実はこの本は、できるだけ多くの皆さんのお役に立ちたいと思い、盛りだくさんで、内容が濃くなってしまいました。希望としては、1回読んだだけで終わって欲しくなく、常に身近に置いていただき、その時点で今自分ができることから実行して頂ければと思っています。
私は、ここに書かれてある「私書箱の作り方」などすべて自分で実際にやってみました。被害に遭った場合の対策、遭わないようにする備えなどについても、自分で原稿を書いた上で、銀行など金融機関の担当の方のご意見などを聞き、加筆修正しました。現実に、明日からすぐ使える内容になっていると思います。
守屋 このなかで、皆さんが一番興味を持たれるのはお金に関する問題だと思います。
先ずやっていただきたいのはネット振込詐欺に合わないための対策です。不正送金は、2013年は、32の銀行で1,315件、被害額は約14億円でした。12年と比べて件数が20倍で額は29倍と急増しました。今年は5月現在ですでに14億円を超えています。現時点では、ガイドラインによって保証の対象になっていますが、法的根拠があるわけではありません。
これを回避する為には、銀行の窓口に直接行くようにするのが1番早い解決方法です。しかし、それではネットのメリットを享受することができません。ここでは、多くの皆さんが利用しているオンラインバンキングを前提にお話します。
すぐやって欲しいことは「専用のセキュリティ対策ソフト」入れるということです。各金融機関によって異なりますので、詳細は問い合わせをするとよいでしょう。通常は無料で提供されています。
例えば三菱、UFJ銀行であれば不正送金を防止するためのインターネットバンキング専用のウィルス対策ソフト「Rapport(ラポート)」が無料で提供されています。
ゆうちょ銀行、千葉銀行、足利銀行等であれば、対策ソフトとして、「Phish Wallプレミアム」が無料で提供されています。
これらは、全てのウィルスの駆除ではなく、不正送金を行なう特有な動作をするウィルスを見つけて駆除してくれる優れものです。ぜひ、ご検討下さい。
(つづく)
【金木 亮憲】
<プロフィール>
守屋 英一氏(もりや えいいち)
2007年に日本アイ・ビー・エム(株)入社。セキュリティ・オペレーション・センターを経て、11年に、経営品質・情報セキュリティ推進室に異動。社内の不正アクセス事件およびISMS内部監査を担当。社外活動として、明治大学ビジネス情報倫理研究所客員研究員、警察庁、経済産業省等のセキュリティ関連WG構成員・研究員を務めている。12年度NPO日本ネットワークセキュリティ協会表彰個人の部を受賞。著書に『フェイスブックが危ない』、『フェイスブック情報セキュリティと使用のルール』、新刊『ネット護身術入門』がある。
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