営農だけではなく、土地の賃借の仕組みも島のために考えられている。UMSPS(宇久島メガソーラーパークサービス)は現在、宇久島の地元で用地取得交渉などを行なっているが、同社の社員たちは土地の事情に詳しい地元の住民で構成されている。代表ももちろん地元の人が担当している。島のためを考える人がプロジェクトのカギを握るポジションについていることは、島の住民に安心感を与えるし、何より何か間違った方向に進んだ際の一定のストッパーとして役立つとの考えにもつながる。ちなみに土地の賃貸契約は計画の3割程度完了したとしており、年内には計画のすべての分の土地取得を完了させたい考えだ。土地は耕作放棄地を含めた農地が中心で、計画の面積だと島中のほとんどすべての農地を借り上げることになる。島の一大改造となるのである。
単にプロジェクトにかかわる企業だけが潤う仕組みではないのが特徴だ。このプロジェクトに関して、島の7割の世帯が賛成していると言う。発電しながら営農もし、島に雇用を生み出して賃借料としてお金も落としてくれる。主幹産業である地場の畜産業とも協力関係が築ける。島の活性化の切り札と期待されている理由が、これなのである。
自然保護の観点から言うと反対意見もあるようだ。これだけ大規模に改造を行うと、島の景観はもちろん、生態系への影響も懸念されるためだ。しかし、島の住民はこう語った。
「私たちも生活していかなくてはならない。たまに来て美しい島と言ってくださるのはありがたいが、美しいだけでは活気は生まれない」。
実は宇久島には、もう1つの再生可能エネルギー誘致計画がある。大規模な風力発電施設の設置である。だが、多くの島の住民から反対を受けている。低周波騒音の被害などに対する懸念が大きな理由としているが、それだけではあるまい。島の発展にどれだけ寄与してくれるか疑問がある、という点も同意を得られていない理由なのではなかろうか。
メガソーラー誘致計画は離島の活性化モデルとなり得るのか。島の住民は次のように語ってくれた。
「島にとって最大で最後のチャンスだと思っている。この計画が実現しなければ、島は衰退していく一方だろう。景観が大きく変わり、生活も変わるかも知れないが、それに対する不安よりも期待の方がずっと大きい」。
発電島構想。発電事業者、地元住民がともにメリットを享受できる仕組みができあがったならば、再生可能エネルギー普及に新たな一歩が刻まれることだろう。
(了)
【柳 茂嘉】
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