4.林原兄弟の驕り
(1)林原について
林原健元社長が執筆した『林原家』の帯には「私は棺桶の中まで、真実をもっていくつもりだった」と記されている。
また林原靖元専務が執筆した『破綻』の帯には<岡山の世界的優良企業「林原」は、何故銀行に潰されたのか!?弁済率93%の倒産の不可思議!?メインバンクの裏切り、そして・・・・この破たん劇のキーとなる役者はいったい誰だったのか。その理由はなんだったのか――わたしはいま、はっきりと確信している。破たん劇の幕を開けてしまったのはメインの中国銀行とサブの住友信託銀行だと。――(本文より)>の文字が踊っている。
この林原兄弟2人に共通しているのは、「弁済率が93%もある名門の林原がなぜ潰されねばならなかったのか」と言うことに尽きると思われる。文中で林原健元社長は、「最終的に取引していた金融機関は28社と広範におよんだ。とても横柄な言い方になるが、こちらから頭を下げて借りた先はほとんどない。非常に不遜な言葉だが、林原の場合は『借りてあげる』という態度が倒産の直前まで通用した稀有な事例だと思う」と語っている。
(2)金融機関の対応
林原は中国銀行の株式を10%以上保有する筆頭株主であり、中国銀行は、メインバンクとして林原への融資額は最大の449億円。大手の上場会社でもない一企業に対してこれだけ融資金額が多ければ、もし倒産となれば中国銀行の決算に大きな影響を与えることになるとの認識は持っていたと思われる。しかし筆頭株主であり、岡山の名門企業であるとの考えで、ズルズルと融資を継続してきたものと思われる。その点を含め、林原をいつも以上に厳重にチェックする必要があり、その責任は重たいものがあると言える。
林原は長年にわたって粉飾決算を行っており、中国銀行はその間に林原の企業経営をモニタリングする機会はあったと思われるが、筆頭株主であることで腰が引けていたと言うのが実情かもしれない。
上場企業の場合、決算書はオープンにされ証券取引等監視委員会、証券取引所、監査法人や証券会社、銀行などが動向を監視しており、会計の透明性は非上場企業よりも高いと言えるが、非上場企業の場合、そのチェック機能を果たせるのはメイン銀行と言うことになる。地方銀行の場合、その地域で30億円以上融資している企業には行員の出向やOBを派遣して、企業の実態把握をしているケースが多い。とくに赤字などがある場合は、数人が派遣され徹底的にモニタリングされ、実印や銀行印も社長の意のままにならない銀行管理の企業となる半面、銀行に潰されなくて済むと言う利点もある。
林原の場合は、むしろ行員の派遣もなく、銀行が経営にタッチすることができなかったことから、疑心暗鬼を生み、必然的に倒産への道を進んだと言えよう。
(つづく)
【北山 譲】
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