脊振の自然を愛する会(福岡市早良区、池田友行代表)の池田代表は、写真をこよなく愛するアマチュア・フォトグラファーでもある。背振の環境保全活動を行いながら、美しい自然の数々をカメラに収め、写真集「脊振賛歌」を発行した。続編が待たれるなか当連載ではフォトエッセイとして、背振の魅力を紹介する。
試行錯誤のなかで山野草の撮影を始めた頃(50代はじめ)、見知らぬ花に出会う事が多くなってきました。7月半ば、脊振山系の縦走路から谷へ下ってきた時、小さくて縦に伸びている黄色の花を見つけました。葉も無く茎だけがスーと30センチくらい伸びている花でした。さほど気にする花でもなかったのですが(まだ花の名前に未熟だったため)、年々その数が少なくなってきた様に思えました。花の名前を調べてみると『コケイラン』でした。
昨年、いつも休憩する場所に座り、ふと横を見ると、すぐ側に1本コケイランが咲いていました。私を迎えてくれたようにも思えました。
最近は、この花が見つかると、ヤバいなと思いつつ、その場を後にします。案の定、1週間後に訪れた時は消えてなくなっていました。盗掘されたのです。
ラン系の植物は数多く盗掘にあっています。
カキラン、エビネ、キンラン、ギンラン、シュンラン、サイハイラン、コクランなどです。
カキランは5年前にいつも咲いている場所から跡形もなく消えていました。エビネやギンラン、シュンランには脊振山系でお目にかかった事はありませんが、盗掘の話を良く耳にします。さらに地味なサイハイランまで数が少なくなってきています。山で咲く花は見るだけにして欲しいのですが、業者に高値で売れるので盗掘が止むことはないようです。
昨日、コケイランの撮影で山に入りました。もうそろそろとウキウキしながら山歩きしていると、願い通りコケイランが咲いてくれていました。あちこちに5株見つかりました。それぞれアングルを変えて撮影し終わると、"元気でね、来年も会おうね"と言って別れてきました。花に出会うと何故か童心になるのです。童心に帰るのは私だけでしょうか。
花ひとつ出合い求めて山に入り 一期一会の出合いたのしみ
―やまぼうし―
【ヤマボウシ】
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<池田友行氏プロフィール>
福岡市早良区在住。1944年3月生まれ
西南学院大学ワンダーフォーゲル部OB。ソニーマーケティング(株)退職後、2008年より早良区と共働で、脊振山系道標設事業や脊振清掃登山に取り組み、中心的役割を果たす。
福岡市早良区の野河内渓谷整備に従事中。
「脊振の自然を愛する会」代表(会員100名)
早良区役所主宰の『早良みなみ塾』自然環境分科会代表
写真集『脊振讃歌』著者
各地で写真セミナー開催、『西日本新聞フォト随想』掲載。
西日本新聞 「風」に、脊振での活動が紹介される。
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