日本中国友好協会福岡県連合会などが主催する「日中文化講座」が4日、福岡市内で開かれ、中国駐福岡総領事館の丁剣領事が講演を行った。テーマは「中国の教育事情、及び、中国留学生事情」。約40人の参加者を前に、中国駐福岡総領事館の役割を説明するとともに、福岡や九州全域に来日している留学生の活動や地域交流、母国の教育事情等について紹介した。
昨年、中国の留学からの帰国者の数は35万3,500人と、今世紀初めと比べ30倍近くに上り、毎年平均32.4%の勢いで増加。留学から帰国した人は修士学位取得者が63%、学士学位取得者が30%、博士学位取得者が6%で、人気留学先はアメリカやオーストラリア、イギリス、日本、カナダといった教育先進国が占めている。
丁領事は上海交通大学を卒業後、佐賀大学大学院に留学するなどした後、2011年から福岡総領事館領事に任命されている。講演では、「海外留学する学生数の増加傾向や、政府の海外人材に対する支援強化、人材の必要性の高まりなどを背景に、留学帰国者の数が急増している」と、留学生の数字動向に言及した。1978年から2013年までに、中国政府が派遣した留学生の数は計16万6,900人に到達。うち、在学中の人数は3万400人、留学帰国者は91.6%にあたる12.5万人だ。
中国国内の教育事情に関しては「市場のニーズがあり、英語オンリーで授業をする学校も出てきた。海外から講師やテキストを完全に集めてくる本格的な学校もある。学生達は中国の統一試験を受けるのではなく、海外の大学を受験するという前提で入学している」と紹介。その一方で「学生にとって就職が厳しい。名門大学に在籍していれば数字も上がるが、就職率は全体として50%位だろう」と就職の状況についても取り上げた。「中国の大学受験には『少数民族受験者を得点で優遇する』という措置がある。また、同じ大学に入るのに『出身地によって合格ラインが違う』という措置も存在する。戸籍制度を実施し『都市部の安定』を目指す政府が、都市部の若者が大学に入りやすく、就職しやすい環境を作るためだったが、少しずつ改善していこうという動きがある」と昨今の実情について述べた。
丁領事は、九州在住の中国人留学生たちの地域交流活動を評価したうえで、「博多どんたくでは一部の留学生が扮した獅子舞が評判となるなど、地域の活動に積極的に取り組んでいる学生もいる。留学生が勉学の余暇を生かして民間交流を促進しているケースも多い。今後も民間交流は非常に大切だ」と語った。
【杉本 尚丈】
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