5.まとめ
◆林原兄弟は、中国銀行と住友信託銀行の抜け駆けを防ぐと同時に、事業再生ADRに同意しなければ、経営陣は変わらずに会社が存続できたとの思いを強く語っているが、その理論が通用しないのは明白である。
なぜならば30年近く粉飾決算を繰り返しながらも、林原健元社長は財務については弟に任せきりで粉飾は知らなかった言い、著書の『林原家』では、<不適切な会計処理が林原の損益などに与える影響>と記し、粉飾と言わずに<不適切会計処理>としている点からも窺えるように、企業の経営者としての倫理観がまるでないからだ。
また林原靖元専務は粉飾決算を主導した張本人であるにもかかわらず、返済を続けているから問題はなかったとうそぶく。さらに、責任を取ることもなく、「そんな林原を倒産に追いやったのはメインの中国銀行であり、サブの住友信託銀行である」と、むしろ被害者のような態度を見せており、財務を預かる責任者としての倫理観は無きに等しい。
銀行は不特定多数の顧客から金を預かり、融資先に貸出することで収益を上げている。貸出の原資は預金。貸出先とは信頼関係の上に立って融資が行われる。にもかかわらず、林原健元社長は、こう述べている――『非常に不遜な言葉だが、林原の場合は"借りてあげる"という態度が倒産の直前まで通用した稀有な事例だと思う』。この言葉が象徴するように、預金者の大切な預金を借りていると言う意識は全くない。
日本国内には非上場・同族経営の会社が数多くある。殆どの経営者は銀行との信頼関係を築きながら地道な経営を続けている。しかし、林原兄弟は名門のバイオ企業という立場に胡座をかき、粉飾によって健全経営を装うなど、すべて自分達を守る道具として林原という企業を利用した。「天才ペテン師」と言っても過言ではないのかもしれない。
(了)
【北山 譲】
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