日本伝承医学の復活を目指す
<食べ物にエネルギーを>
そのようななかでわれわれは1975年にセーフティ・ファースト・カンパニー(SFC)として創業し、ビワ葉療法・自然療法による健康指導で日本伝承医学の復興運動を起こしました。私は日本の現状を元に戻すには、精神文化を明治以前の体系に戻せばよいのではないかと考えています。
少子高齢化社会もそれで片付くはずです。元気な高齢者が身体の弱った高齢者をケアすればよいのです。これこそ、昔の助け合いの組織文化です。その根底にボランティア意識を持った仕事にすればよいのです。食事も自給率を上げて、米食に変えればいい。昔は粟、稗、大豆などの混じった五穀米を食べていたわけです。それで十分元気に働き、生活習慣病などもほとんどありませんでした。つまり人間というのは、自然の力のあるものを食べていければ生きていけるのです。
今は環境を潰してしまったから、水がだめ、食べ物がだめ。そして栄養学がどうのと理論ばかりが先行していますが、食べ物は栄養学ではないのです。その食べ物にエネルギーがあるかどうか。エネルギーのあるものを食べる。これがポイントです。
エネルギーというのは思い入れもあるし、自然の力ですから、水エネルギーが土壌エネルギーになり、土壌エネルギーが食物エネルギーに還元されていくわけです。ところが今は、水がだめ、土がだめだとすれば、食物はいくら栄養をあげてもだめという話になります。エネルギーがあるかどうかが大事なのです。もしなければ、そのエネルギーを元に戻さなければならないというのが私の強い思いです。
現在、沖縄の農学博士とともに、土にエネルギーを持たせて昔の土に戻す研究を行なっています。
昔は「食医」というのがいました。オーガニックという言葉をアメリカに広めた人物で、マクガバン報告にも大きな影響を与えたといわれる久司道夫先生の師匠にあたる桜沢如一、そして彼が師事した石塚左玄などは食養生を説いて食の大切さを訴えました。
昨年、東京で石塚左玄生誕100年祭があり、講師としてお話しさせて頂きました。
それは、『日本伝承医学から見た石塚左玄の食養』というタイトルです。石塚左玄生誕100年といいますが、私のほうは日本伝承医学の食養法では1500年の歴史なのです。日本伝承医学が存在して、その流れのなかに、食養そのものがあるのです。
【聞き手、文・構成:田代 宏】