当健康情報サイトで5日に既報のとおり、4日に開催された「第4回健康食品の表示に関する検討会」では、米国やEU(欧州連合)など海外諸国における機能性表示制度の報告と意見交換に多くの時間が割かれた。
その結果、「多くの委員がEU型に関心を示したことなどから、米国型を導入する可能性は狭まったようだ」(健康産業速報)、「サプリメント先進国の事例が報告された今回の検討会では、トクホ制度のある日本の健康食品業界が、ヘルスクレームのあり方などについて目指すべき方向性、課題等があぶりだされる格好となった」(健康美容EXPOニュース)などの報道がなされた。果たして本当にそうなのか?
データマックスではNNFAジャパン(現・国際栄養食品協会)の元代表で、サプリメントの立法化を目指すエグゼクティブ会議の議長を務めたこともある大濱宏文氏(バイオヘルス リサーチ リミテッド代表取締役)に同検討会にかかわる感想をたずねた。
◇「サプリメント法の確立がベスト」(大濱氏)
大濱氏の回答は、見方を変えれば、表示検討会そのものの意義を問うことばとも受け取れる。
現在、わが国の健康食品には明確な定義が与えられておらず、行政間では「いわゆる健康食品」というあいまいな呼び方が用いられている。食品として扱われているため、「~に効く」や、「~を治す」などの効能や効果は、薬事法に抵触することから消費者に伝えることができない。いわば「健康食品」とは身過ぎ世過ぎのための『仮の姿』に過ぎないのだ。
ただし、厚生労働省(昨年9月からは消費者庁)が許可した特定保健用食品(以下、特保)については、一定の効能表示が許されている。
ところが昨年9月に発覚した花王のエコナ騒動をきっかけに、特保の安全性神話に霧が立ち込めた。衆議院選挙のどさくさ紛れに発足した感のある消費者庁だったが、9月1日に発足したあとは、食品安全委員会との二人三脚で「健康食品の表示に関する検討会」を設置し、特保制度の存廃も含め、健康食品の表示のあり方についての討議を開始した。
当初、エコナ問題に端を発して設置されたといわれる同検討会の思惑を危ぶむ業界人は多く、「特保ごと健康食品がつぶされる」など極端な悲観論もささやかれたらしい。今や、健康食品が食品業界の『お荷物』と化してしまったのを嘆くかのような発言だ。
ところが蓋をあけてからわずか2カ月で、あたかもヘルスクレームが許可されることを前提にしたかのような二者択一論が取り沙汰されはじめた。いったいどうなっているのか? これは単に業界紙の業界に対するエール、行政に対するけん制にすぎないのか?
◇表示検討会は全体のほんの一部
先鞭的な役割を果している米国とEUはいうまでもなく、中国や韓国、台湾においても法制度が整っている。また、カナダやオーストラリア、ニュージーランドほか南米諸国でも作業が進められていると聞く。1991年、機能性食品(ファンクショナルフーズ)の制度を打ち立てて新しい時代をひらいたかにみえたわが国も、今では世界標準に取り残されているらしい。そういう意味でも、海外に目を向けることは必要なことだろう。ただし、表示検討会で討議されているのは、問題のほんの一部分の話にしかすぎないということだ。
Net-IB「健康情報サイト」では来月より、大濱氏による連載を開始する。そもそもサプリメント法とは何か、表示検討会の動きを眺めながら、米国やEUにおける制度を紹介、わが国に適当な法制度、ならびに法制定に必要とされる諸手続きなどについて解説する。
食品安全基本法第9条には「消費者の役割」として次のようにある。
「消費者は、食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めるとともに、食品の安全性の確保に関する施策について意見を表明するように努めることによって、食品の安全性の確保に積極的な役割を果たすものとする」
読者のみなさんとともに、健康食品のあるべき姿を考えていきたい。
【田代】