国内外の経済に関する調査や研究、コンサルティング業務を行なっている(株)大和総研(東京都江東区)は先ごろ、『健康食品に係る制度と市場動向』と題するレポートをまとめ、健康食品業界の現状と展望を分析した。
同レポートは、健康食品の分類から市場規模推移、業界の取り組みや法制度の現状をA4判13ページにわたるレポートでコンパクトに解説している。なかでも特定保健用食品(以下、トクホ)に関しては、(財)日本健康・栄養食品協会のデータを参考に、誕生から現在までを5ページにわたってわかりやすく述べている。
レポートによると、トクホの市場規模(メーカー希望小売価格ベース)は2007年度で6,798億円。09年度に厚生労働省からトクホの許可を受けた商品数は77件(09年11月現在)で、93年の導入時からの累計は883件としている。許可件数が140件を超えた07年をピークに減少傾向にある。09年6月からトクホの管轄が消費者庁に移管したために、現在はトクホの審査は止まっているとし、消費者庁で進められている「健康食品の表示に関する検討会」の議論次第ではトクホ制度が大きく変わる可能性も否定できない、としている(09年11月時点)。
レポートでは、UBMメディア・健康産業新聞のデータを借りて、08年のトクホを除く健康食品の市場規模(小売ベース)を1兆1,350億円としている。したがってトクホを含む健康食品市場は1.9兆円と推計できるという。
総務省が行なっている家計調査によれば「健康保持用取得品」への支出は05年のピーク時で1万5,024円/年だったとし、その後は1万2,000円台で推移しているという。また単身世帯と2人以上の世帯では支出の動向に若干の違いがあるとし、08年の支出では前者が前年比25%増だったのに対し、後者は2%減だったと伝えている。
ちなみに「健康保持用取得品」とは、「栄養成分の補給など保健、健康増進のために用いる食品で、錠剤、カプセル、顆粒状、粉末状、粒状、液(エキス)状など通常の医薬品に類似する形態」をとった健康食品のこと。
レポートでは最後に、「法規制の運用強化」、「安全性の議論」、「ヒット素材の不足」が健康食品市場の成長を阻んでいるとしながらも、「高齢化社会の進展」、「健康食品の浸透度」などを推し量った場合、「健康食品へのニーズは根強くあろう」と結論している。さらに、健康食品が成長していくための条件として、企業と消費者と行政の3者に、(1)企業は法令遵守や安全性確保などで足元を固めたうえで、消費者のニーズにあった商品を販売していくこと、(2)消費者は情報を収集し特性を理解したうえで、健康食品を適切に利用すること、(3)行政当局は過去の経験や議論を活かし、消費者と企業がともに利益を得るような制度の策定を行なうこと――を提言し、結びのことばに代えている。
【田代】
▼関連リンク
『健康食品に係る制度と市場動向』(大和総研ホームページ)