通信販売市場が伸びている。百貨店の不人気、「タスポ特需」の反動によるコンビニエンスストアの低迷により通販の好調ぶりがいっそう際立ってみえる。実際、商品比較のし易さや情報量の多さ、注文の手軽さなど時代のライフスタイルに合ったシステムが消費者に受け入れられているようだ。なかでもネット通販やモバイル通販の伸びが著しく、近い将来ネット通販が通販市場を制覇するとの見方も強まっている。(株)アイリンク・アソシエイツ(福岡市中央区、電話092-732-0050)の代表取締役・井野和弘氏は『皇潤』で知られるエバーライフでマーケティング本部長を務めた人物。エバーライフが売上高200億円を突破したときの責任者だ。自ら化粧品や健康食品のテストマーケティングを実施するかたわら、複数の大手食品メーカーで通販事業の立上げや再生などのコンサルタントを務めている。同氏に通販ビジネスの可能性を聞いた。
一億総通販屋時代の到来
昨年、日経新聞の5月26日付の一面で、コンビニエンスストアの売上高を通信販売による売上高が超えたというニュースを見たときは衝撃を受けました。たしか1月20日のフランチャイズチェーン協会の発表で、2008年のコンビニ主要店の売上が百貨店を初めて抜いたという事実が明らかになったあとのことです。たばこ自動販売機の成人識別カード「タスポ」の特需を受けたことにより総売上高は7兆8,566億円と、百貨店を5,000億円弱上回りました。そのコンビニを通販が超えたというのですから驚きました。これからの成長を考えたばあい、百貨店や商店街は見るも無残に下降線をたどりつづけています。コンビニもタスポ反動の波が押し寄せているらしく、すでに飽和状態のようです。
そのコンビニをしのぐほどの勢いがある通信販売が、停滞していく要素があるかなと考えた場合に何もないわけです。その売上高が8兆円超です。よくよくみると、8兆円のうち7兆年はウェブです。それ以前をずっとさかのぼってみても、伸びているのはウェブだけです。
それ以外のメディア、電波とか新聞とか、チラシ、カタログ、こういうメディアはほとんど伸びていない。すべてウェブ通販が通信販売業界の底上げをして伸びつづけている。
ところで、ヤフーのオークションを考えたばあい、私が要らなくなったゴルフクラブを売ろうかなと思い立ち、オークションに出して何処かの誰かが買うとします。これも通販です。逆をいうと、かつて一億総不動産屋といっていたバブル期、誰もがワンルームマンションを買った時期がありましたが、むしろこれからは一億総通販屋時代といえなくもありません。楽天に出展するのにいくらぐらいのお金がかかるのか、マージンをいくらぐらい取られるのかと考えてみると、よほどのことでもないかぎりたいていの人が出展できます。
決済方法でも、モノを送る仕組みにしても、周囲には誰もが通販をできる仕組みと環境が整っているわけです。いわばブローカーが700万人いるわけですから、そうなると、それ以外の目で勝負しているところはあまりいないのですね。
テレビ通販の最大手は「ジュピターショップチャンネル」で2,000億円前後だったかと思います。2位が「QVC」で1,000億円超。そしてもう1社、1,000億円を超えている通販会社があります。今をときめくジャパネットたかたです。
次に500億円から1,000億円のあいだでテレビショッピングをやっている会社はいくつあるでしょうか。ほとんどないですね。500億円以下の会社は数社ありますが、100億円以下の会社となると、50億円から100億円、10億円から50億円といくらでもあります。
通販といっても、さまざまなジャンルがありますが、私が考えるのは、雑貨か、化粧品か、健康食品か、という切り口でしか考えません。そのなかでも、すぐれたリピート商品は何かという切り口で考えます。毎月一定額のお金を支出する通販というのは何があるのかと考えてみますと、案外少ないのです。
【文・構成:田代 宏】