公正取引委員会(以下、公取委)は26日、「シャンピニオンエキスによる口臭、体臭及び便臭を消す効果を標ぼうする商品の不当表示事件」において、健康食品の素材開発会社(株)リコム(東京都豊島区、代表取締役:浜屋忠生)が申請していた審判請求に対して却下の審決を下した。
同審決は、2009年2月3日、消臭効果をうたう健康食品製造および販売会社に対して公取委が下した排除命令に対するもの。福岡市内の販売メーカー2社を含む7社が対象となっていた。
「シャンピニオンエキス」とは、口臭等を消すキノコ由来の成分で、リコムが開発した機能性素材。同素材を配合した健康食品を販売していた7社の商品の表示に対して、「各表示がいずれも一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すことで、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示とみなされる」として、口臭や体臭・便臭を消す合理的な根拠を示すための資料の提出を求めた。また、各社が提出した資料に対して合理的根拠が認められなかったとして排除措置に至ったというもの。
それに対し、7社に原料を製造・供給する立場にあるリコム社は、「(同措置が)7社との取引を不可能、あるいは著しく困難にするおそれがあり、また、7社との紛争を生じさせかねない」と主張して7社に対する排除命令の取り消しを求めていた。
審判請求が却下された主な要因は、(1)リコム社は排除命令の受命者ではないため、審判請求適格はない、(2)排除命令はリコム社に対して下されたものではなく、7社の商品の表示に対して行なわれたもので、同社の利害にはかかわらない――の2点。
公取委では、「排除措置はあくまで7社が販売していた特定の商品の、しかも表示に対して行なわれたもの」とし、「(リコム社が製造している)シャンピニオンエキスに関して行なったものではない」と強調する。
排除命令を受けた会社は同措置を冷静に受け止めているようだ。リコム社からは「報道関係資料」として26日付で関係各社にA4判のファックスが送られている。そのなかで同社は、審決概要とのくくりで審決の理由を4点述べているが、「リコムが7社に対してシャンピニオンエキスの効果・性能について自ら信じるところを主張することも本件各処分(排除命令や審決)により妨げられない」との解釈は、公取委の見解と多少食い違う。
公取委の見解によれば、「(そもそも)リコム社の製造するシャンピニオンエキスに関しての排除措置ではなく、商品の表示に対するもの」と説明しているからだ。さらに、商品に使用されるシャンピニオンエキスについても、データ・マックスの取材に対し「合理的根拠が見出されれば、効果を標ぼうしてもかまわない」という主旨の踏み込んだ回答を行なっている。
昨年排除命令を受けたDHCやデイ・シー・エスなど数社は、すでに同素材を用いた商品の取り扱いを止めている。
今回の審決に対しても「今さら」の感を抱いている会社がほとんどのようだ。
▼関連リンク
・公正取引委員会報道発表資料
・審決書