少子高齢社会における食と健康~伝統食と健康食品と医療の三位一体を目指して
参議院副議長の山東昭子氏は、健康食品業界を代表する(財)日本健康・栄養食品(東京都新宿区)の会長を務める。また同氏は自民党食育調査会長も務め「食育基本法」を立法化したことでも知られている。超高齢社会の到来を間近に控え、「元気な120才を創る会」の理事として健康長寿社会の実現も目指している。同氏に食育を通した将来の日本のあり方、また健康食品業界の課題と展望について聞いた。
学生の頭脳を養う朝食
――山東先生は自由民主党食育調査会長時代、議員立法で食育基本法を制定したことで知られています。最近、若い世代で食生活の乱れが指摘されていますが。
山東 地方などは3世帯同居などが多いですが、都会になるほど核家族化が増えていますし、親にも共働きが増えてきていますから、忙しいというのでどうしても朝ごはんを作らないという方が増えてきたと思います。日本が長寿大国になってきたのは、なんといっても和食を中心にバランスのとれた食事というのがいちばんのポイントだったと思うのですが、昔と違って、割合間食というものが生活のなかに入ってきたために、栄養バランスという点から考えると、どうしても洋風の食事に傾きがちな傾向が強いと思います。
逆に世界では、肥満の傾向が強く、やっぱり和食ということで和食ブームが高まってきているのですから、わが国も原点に戻って日本食を大切にしていかなければならないのではないでしょうか。
生活が便利になってきたものだから、お母さんたちも冷凍食品を手軽に使えるようになってきました。そういうものを使いながら、ちょっと一品、自分の味というのか、おふくろの味といいますか、親子の絆を大切にする何かを作っておくといいと思いますよ。それは朝作らなくても、近頃では冷蔵庫も上等なものがあるのですから、手が空いたときにちょっと作っておけばいいわけですから。それを朝出してあげることも必要なのじゃないかあと思います。そういう一工夫が親子のあいだには大切だし、必要だと思います。
子どもたちの勉強に対する頭脳のエネルギーという点から考えてみても、香川栄養学園(埼玉キャンパス:埼玉県坂戸市)が、医科大学の学生100人に対して行なった試験では、朝ごはんを食べたグループのほうが、食べなかったグループより成績がよかったというデータが出ています。翌年、残された50人をまたその半分ずつに分けて試験したそうですが、朝ごはんを食べたグループの成績は上がったと聞いています。
きちんと朝にブドウ糖を摂っておくことが学生には大切だということですね。小学校などでも、地区によってはホームルームの前にきちんと朝食を食べさせて運動をやらせるという学校もあるそうで、朝食を食べて運動をすると、すごくおなかがすいて、勉強も一生懸命やるというデータがあるそうです。朝食というのはこれほど大切だということです。
――農林水産省でも、人気ゴルファーの石川遼プロを起用して「めざましごはん」のキャンペーンを行なっていますね。先生はゴルフもご趣味だとお聞きしています。
山東 遼君の勧めじゃないけれども、朝ごはんはすごく大切だということです。「早寝早起き朝ごはん」というのは、前自民党政権からずっと引き継いでやってきたことで、小泉政権で「食育」ということをやっていたわけですが、食育ということばもだいぶ浸透してきたようです。
私たちが法律を作った頃には、まだ3割くらいしか知らなかったのですが、今では逆に知らない人が3割ぐらいに減ったのではないでしょうか。また、この食育ということばは英語に置き換えると難しいので、料理評論家の服部幸應先生も世界に出ても食育でいこうとおっしゃっていましたし、外国人も「SYOKUIKU」といっていますよ。
韓国あたりでも、伝統食がファーストフードなどに押されているようで、食育は大切だというので元に戻そうという動きがあり、食育の普及に力を入れているようです。
【田代 宏】
<プロフィール>
山東 昭子(さんとう あきこ)
11歳で芸能界入り、女優・司会・レポーターとしてテレビ、映画、雑誌で活躍。
74年参議院全国区に32歳の最年少で初当選。以後、6回当選、参議院で環境委員長、外務委員長を歴任。党では女性局長、環境部会長をはじめ教育・福祉・住宅対策・外交関係を担当。
90年我が国6人目の女性大臣として科学技術庁長官に就任。自民党両院議員総会長、食育調査会長などを務め、参議院自民党を代表するベテラン政治家として幅広く活動中。NPO法人「元気な120才を創る会」理事も務め、健康長寿社会の実現を目指している。趣味はゴルフ、音楽鑑賞。