3)行き過ぎた機能表示は避ける
健康によい結果が出ている食品素材は、実際に多く開発されています。ただ、前回紹介した「食品」と「医薬品」の違いを定義したルール(薬事法等)が、実際の消費者ニーズの変化に追いついていないのが現状なだけです。これら健康食品の表示をどうするかという問題は、現在も行政機関で検討されている段階で(消費者庁「健康食品の表示に関する検討会」)、将来的に「統合医療」などに対する支持が拡大すれば、これに合わせてルールも変わってくると思われます。
したがって、当コラムでは現時点(2010年3月)でのルールに基づき、健康食品の表現を見分けるポイントをお伝えしようと思います。
この背景について触れた理由は、「企業の説明責任」と「現在のルール」の間に葛藤があるということを消費者の皆さんに知っていただきたかったからなのです。 現在のルールでは、企業が健康によい成分を発見し新しい食品を開発しても、その成分がなぜ健康によいのか、どのように健康によいのかを表現することが禁止されているのです。
もっとも企業としては、商品を開発し販売する以上、消費者に対して説明責任があると考えますし、同時に消費者の健康に対する責任を負っているのは言うまでもありません。
ここで大切なのは、「最低限説明しなければならない健康機能」と、本当は病院に行った方がよいと思われる症状の消費者に対して「回復する誤解を招くような健康機能」と、表現の度合いで大きく意味が違ってくるという点です。
前回の終わりに(健康情報サイト3月4日既報)、過度に病気の回復などを期待される表現があれば、その商品は見送った方がよいだろうと書きました。上記の理由から、「これを飲むだけで○○病が治る」など、行き過ぎた効能効果を表現している商品は、将来にわたって健康事業を継続する責任感が強くない企業のものと推測できるからです。 開発された商品に対する説明責任の範囲を超えている、と考えられるのです。
将来にわたる責任感の有無は、商品のもつ安全性の面で重要なポイントとなります。例えば、ある商品について、「細菌検査などによる賞味期限設定の検証が十分されているのかどうか」使用している成分の継続的な摂取に関する検証など、長期的な視点での商品の安全性設計に疑問が残るというわけです。過度の効能効果を表現している商品は、この時点で信用が低いと思われます。
(つづく)
<プロフィール>
川合裕之(かわい ひろゆき)
香川大学卒業後、明星食品(株)に就職。営業職のかたわら、エリア向け商品の開発にも携わる。独立後、03年に(株)ラベルバンクを設立。食品表示の視点から安全性・機能性に関するコンサルティングを行なう。商品販売のためのプロモーションも手がける。
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