少子高齢社会における食と健康~伝統食と健康食品と医療の三位一体を目指して
参議院副議長の山東昭子氏は、健康食品業界を代表する(財)日本健康・栄養食品(東京都新宿区)の会長を務める。また同氏は自民党食育調査会長も務め「食育基本法」を立法化したことでも知られている。超高齢社会の到来を間近に控え、「元気な120才を創る会」の理事として健康長寿社会の実現も目指している。同氏に食育を通した将来の日本のあり方、また健康食品業界の課題と展望について聞いた。
目にも美味しい伝統食
山東 今の日本では、何でも公平でなければならないということがいわれていますけれども、逆に公平さが人びとの興味を奪うこともあります。金太郎飴みたいにどこも同じというふうになってしまって、ハンディキャップを持った人たちも介護の人たちも、同じようにそれに応じた治療であるとか、接し方とかはあるはずです。個性をもって介護施設もいろいろな経営があっていいと思います。
低所得者の方たちのためだけのものと、そうでない、ちょっとお金を出せる人たちのためのものがあっていいと思います。そういうところにはいろいろな工夫をもって、「おいしいもの」「興味があるもの」を四季に応じて出してあげればいい。
日本の伝統文化といいますか、日本の食器、陶磁器や漆器というものなどを見ていると、日本の食文化というのは本当に奥が深いなというふうに感じて、何かほのぼのとしてうれしさみたいなものを感じます。それを子どものうちから育んでいかなければならないと思うのです。食べやすいからフォークとスプーンで、とかじゃなくて、きちんと箸を持たせて、箸の持ち方1つとってもきちんと指導する、つまり躾(しつけ)ということが基本的に大切ではないかなと思います。そういう意味で、先ほどお話しした食育というものは、箸の持ちかたから生産者に対しての感謝の気持ちというのでしょうかね、そういうものも感じられる感性を養ってほしいと思います。
いろいろな人たちに感謝をしながら、約68億人の世界人口のうち8億人が飢えに苦しんでいるとか、毎日2億人以上の人びとが亡くなっていることを考えたら、いわゆるデパ地下じゃないのですが、デパートの地下を歩いているとこんなに豊富な食材があって、こんなにおいしそうなものが並んでいるという喜びを感じながらふとわれに返って、世界の人たちは飢えに苦しんでいるのに、日本人はほんとに心から喜んでいるのだろうか、その喜びがわかっているのだろうかと、しみじみと感じますよね。
【田代 宏】
<プロフィール>
山東 昭子(さんとう あきこ)
11歳で芸能界入り、女優・司会・レポーターとしてテレビ、映画、雑誌で活躍。
74年参議院全国区に32歳の最年少で初当選。以後、6回当選、参議院で環境委員長、外務委員長を歴任。党では女性局長、環境部会長をはじめ教育・福祉・住宅対策・外交関係を担当。
90年我が国6人目の女性大臣として科学技術庁長官に就任。自民党両院議員総会長、食育調査会長などを務め、参議院自民党を代表するベテラン政治家として幅広く活動中。NPO法人「元気な120才を創る会」理事も務め、健康長寿社会の実現を目指している。趣味はゴルフ、音楽鑑賞。