少子高齢社会における食と健康~伝統食と健康食品と医療の三位一体を目指して
参議院副議長の山東昭子氏は、健康食品業界を代表する(財)日本健康・栄養食品(東京都新宿区)の会長を務める。また同氏は自民党食育調査会長も務め「食育基本法」を立法化したことでも知られている。超高齢社会の到来を間近に控え、「元気な120才を創る会」の理事として健康長寿社会の実現も目指している。同氏に食育を通した将来の日本のあり方、また健康食品業界の課題と展望について聞いた。
偽装表示には厳しく、選択は自己責任
――昨年12月から消費者庁のほうで「健康食品の表示に関する検討会」が開催されています。表示規制の強化につながるのではないかと懸念する業者も多いようです。
山東 偽装表示をやったところはきびしく罰すればいいのですが、日本は自由主義の国ですから、もっとアメリカのように自己責任ということをポイントにしていくべきだと思います。
みなさんそれぞれに研究して販売されているわけですから、そう悪いものはないわけですよ。これを食べたらぜったい癌に効きますとか、そういうことをいって巨額のものを売りつけているような悪質な企業はどんどん罰すればいいのです。それ以外のばあいは、あくまで消費者側からみて、わかりやすい表示というのはやはり避けて通れないのではないでしょうか。表示すべきは表示して、この商品にはこういう成分が入っていますよ、さあ、どれをお選びになりますか、お選びになるのは消費者のみなさんのご自由ですと――。
日本のばあいには都合のいいときだけすぐにお役所お役所となってしまうのですよね。私自身も含めて消費者のかたも、多くの情報を収集できる世の中になってきて、かなり勉強する時代になってきましたので、そのなかで自分の状況にあったものやはりもう少し自分で選んだものに対しては責任を持つようにしたほうがいいのではないでしょうか。
あくまでも、基本は普通の食生活ですから、プラスアルファとして、食生活では摂れないなにかを、自分にとってこういうものも摂りにくいから摂ってみようじゃないか、こういうものはプラスになるのではないか、という自分の体に合った相性のいい健康食品を補助食品として選ぶという時代ではないかと思います。そのためにはやはり、きちんと表示されてこういうものが入っているとわかりやすいものでなければなりませんね。健康食品なのだから、薬事法がどうこうよりも、何に応じてとか、科学的根拠がどうとかはむしろいわなくてもいいと思います。あまりわからなくしていると、かえってインターネットでよその国の紛らわしいものと同じにしてしまって、そちらを選んでしまうということになりかねない。ほんとに命を落としかねないものにもぶつかってしまうということがありますから、そうした整理はきちんとして、あとは自由にしたほうがいい。あまり国が国がと消費者が騒ぎ立てるので、かえって国が口出しをしすぎてしまうのではないかとも思うのですね。
薬じゃないのだから、個人的にはそれほど国が神経質にチェックする必要はあまりないのじゃないか、もっと自由にちゃんとやりなさいよということにして、その代わりに悪いものは罰するようにすれば私はそのほうがいいと思っています。
たとえば化粧品を例にとれば、ものすごく原価をかけている場合と、原価はそれほどかかっていないけれども広告代とか容器だとか、そういうことに大企業はお金をかけているというばあいもあります。ですからその化粧品のつくりだす環境の中でそれぞれがこだわって会社が作っているわけですから、そのこだわりをどういうふうに利用者が評価するかということは、それは女性も勉強しているし、まして化粧品というのはその人の肌に合うかどうかということがあるわけでしょう。ですからそれは名前やブランドではなしに、それぞれが見つけていくということが大切だと思います。それこそ自己責任ですよね。昔は外国品がいいみたいな時代がありましたが、これでなくてはというのは、今では自分でつかみ取っていくしかないのではないでしょうか。
【田代 宏】
<プロフィール>
山東 昭子(さんとう あきこ)
11歳で芸能界入り、女優・司会・レポーターとしてテレビ、映画、雑誌で活躍。
74年参議院全国区に32歳の最年少で初当選。以後、6回当選、参議院で環境委員長、外務委員長を歴任。党では女性局長、環境部会長をはじめ教育・福祉・住宅対策・外交関係を担当。
90年我が国6人目の女性大臣として科学技術庁長官に就任。自民党両院議員総会長、食育調査会長などを務め、参議院自民党を代表するベテラン政治家として幅広く活動中。NPO法人「元気な120才を創る会」理事も務め、健康長寿社会の実現を目指している。趣味はゴルフ、音楽鑑賞。