誤解を招く主張は慎むべき
(株)DHC(東京都中央区)など健康食品を取り扱う7社に排除命令が下されたのが、2009年2月3日のこと。その後、(株)リコム(東京都豊島区)が行なったシャンピニオンエキスに関する研究には、「応用薬理76」に発表された論文「保存期腎不全患者におけるシャンピニオンエキスの尿毒症物質,腸内菌叢および糞便性状に及ぼす影響」の1つだけ。シャンピニオンエキスが慢性腎不全の進行を遅らせる作用を持つというもので、直接「消臭」に関係するデータではない。リコム側は取材に対してそのことを認めた。「消臭に関しては2年前のものしかない」(同社)という。
だとすれば、消臭に関する新しいデータが取得されていないかぎり、前回も述べたとおり、公正取引委員会の抱く「否定的要因」が払拭されたとはお世辞にもいえまい。
「便臭といっても何千種類もあるのに、リコムは数種類のデータしか取っていないではないか」という公取委に対し、リコムは「最も有効と思われる臭いについて調べている」と反論していた。それでも主張が通らなかったリコムは、結局のところ平行線をたどるしかない水掛け論のなかで、面当てのように広告を掲載したとしか受け取ることができない。その思いは、控訴はしないとしながらも、「公的な場で闘いたかった」(同社)と述べるリコム側の言葉尻に滲み出ている。
ならば裁判を起こして闘えばよかったのではないかと水を向けると、「今は公正取引委員会も歩み寄って頂いている」という。そして、「(今後は)あくまで、法律の範囲内でシャンピニオンエキスの有効性を主張していきたい」とトーンダウン。一方、販売会社に対しては、「以前から関連法規に準じて販売してくださいと言っている」と弁明も忘れない。
法的には、リコムの資料を用いることで消費者に対して著しく優良だとの誤認を与えない限り、リコムに累が及ぶことはない。しかしながらリコムの報道関係資料や広告掲載は、あたかも新たな知見が出たような誤解を販売会社に与えかねない内容になっている。冷ややかな目を注いでいる販売会社が、排除命令を受けた会社のなかにもあったのは事実だが、リコムの主張を誤解して再び有効性を標ぼうする販売会社が現れたらどうするのだろうか。
健康食品を取り巻く法整備の不備はさておき、負け犬の遠吠えに似た主張はむしろ慎むべきだろう。
次回は「黒酢」を取りあげる。
【田代】