少子高齢社会における食と健康~伝統食と健康食品と医療の三位一体を目指して
参議院副議長の山東昭子氏は、健康食品業界を代表する(財)日本健康・栄養食品(東京都新宿区)の会長を務める。また同氏は自民党食育調査会長も務め「食育基本法」を立法化したことでも知られている。超高齢社会の到来を間近に控え、「元気な120才を創る会」の理事として健康長寿社会の実現も目指している。同氏に食育を通した将来の日本のあり方、また健康食品業界の課題と展望について聞いた。
業界の結束&消費者・医療界の理解必要
――健康食品というカテゴリーを作ることは難しいでしょうか。いわゆる健康食品は効能効果を標ぼうしてはいけないということになっていますが。
山東 それがおかしいのですよ。特保だってお茶とかヨーグルトとかばかりで、そんなものに国がお墨付きを付ける必要があるのかというものばかりではないですか。
にもかかわらず、多額のお金をかけて、認可をとるというのが何かしらおかしいのではありませんか。それだって結局商品の価格にはね返ってくるのですから。それはクエッションマークで、それをとるために一般の中小・零細企業がとても追いつけないということになってしまうのです。
大企業の方はほかでいくらでも儲けているから、こちらのほうでは多少赤字になっても構わないというので、大々的に宣伝する。実際には中小の作ったものがいいものであっても、大企業がつくった広告に埋没してしまうということになります。
やはりコツコツとやっているところが、不当にではなく、報われるようなことが必要です。堅実な会社をどれだけつくっていくか、そのための手助けを零細企業に対してでもやっていくというのが、われわれ(財)日本健康・栄養食品協会(以下、日健栄協)の務めだと考えているのですがね。
――多くの団体が存在する業界で、日健栄協の指導力に期待する声は昔からあったと思いますが、結局、情報が業界内を駆け巡るだけで消費者とのパイプ役までは果たすことができませんでした。今こそ、業界と消費者を情報でつなぐことは必要だと思うのですが。
山東 必要だと思いますねえ。そのためには、一番最初にできた業界団体ではありますから、日健栄協が率先して、できるだけ壁を低くしながら、そのなかで充実したものをつくっていくために環境整備というものを整えてやっていきたいなというふうに思っています。
にもかかわらず皆が、「俺のところが一番だ」みたいな感じで別の勢力を作ろう作ろうとしていると、結局みんな埋没しかねません。大きな意味で健康食品全体を日本として考えるという形でやるためには、みんなが協力し合ってお互いに大同団結するというようなことは、ある意味では必要だと思うのです。それだって、それぞれで食を通じて健康な人を作ろうという意味では目的は同じなのですからね。
そのために、まだまだ理解できない人たち、昔はあるていど高齢者の人たちが多かったのですが、最近では若い人たちも逆に体が荒んでいますからね、傷んでますから(笑)。むしろ若い人たちがきちんとした食生活をしながら、なおかつ、プラスアルファで健康食品を取り入れるということが本当に健康な体をつくっていくことになるのだと思います。そういう意味では、一部理解不足の若い人たちのためにも、やはり何らかの形でもっともっと認知を広げて理解していただきたいと思います。また薬剤師の人たちにもっと健康食品のことを勉強してもらって、それからお医者さんたちにも胸襟を開いていただいて、健康食品をじょうずに患者さんに勧めていただけるといいですね。医者の方でも、健康食品に理解を示して協力的にやらなければならないと思っていらっしゃる方と、どうもあれは胡散臭いと頭のなかにインプットされている方といらっしゃいます。しかしこれからは、医療界ももっとほんとうに大きく発想の転換をし、その世界で認められているものでその人の体に合ったものは、どんどん日本でも取り入れていくことが必要だと思います。それが薬品であっても、健康食品であってもね。
【田代 宏】
<プロフィール>
山東 昭子(さんとう あきこ)
11歳で芸能界入り、女優・司会・レポーターとしてテレビ、映画、雑誌で活躍。
74年参議院全国区に32歳の最年少で初当選。以後、6回当選、参議院で環境委員長、外務委員長を歴任。党では女性局長、環境部会長をはじめ教育・福祉・住宅対策・外交関係を担当。
90年我が国6人目の女性大臣として科学技術庁長官に就任。自民党両院議員総会長、食育調査会長などを務め、参議院自民党を代表するベテラン政治家として幅広く活動中。NPO法人「元気な120才を創る会」理事も務め、健康長寿社会の実現を目指している。趣味はゴルフ、音楽鑑賞。