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表示規制の狭間で揺れる健康食品(6)~表示にすがる健食の功罪(下)「えがおの黒酢(1)」

2010年4月19日 11:14

前年比で倍増の167億円達成

 4月2日、(株)えがお(熊本市東本町、代表取締役社長:北野忠男)は関係業者を招き、熊本市内のホテルで経営方針発表会を開催した。同会場でえがおは、2010年3月期の売上高が167億円に達したと報告した。これは実に、前年3月期82億円の売上に対して倍増に当たる数字だ。顧客件数は730万件を超えているとされる。
 同社は、テレビショッピングや新聞の折込チラシを通じて健康食品を販売する通信販売会社。1989年に(株)ロフティとして創業、皮革製品の輸入・卸などを経た後、97年にオリジナル健康食品『にんにく卵黄油』を発売、全国のテレビショッピングで放映を開始した。その後「健康茶」「深海鮫生肝油」などの商品を立てつづけに発売し、ケーブルTV局やCS局への販路拡張を図り、2005年には売上高25億円を達成している。
 同年は別の意味で、えがおにとって記念すべき年となる。後に同社の柱となるヒット商品『もろみ黒酢ゴールド』を発売した年に当たるからだ。
 その後も06年40億円、07年48億円と順調に売り上げを伸ばしてゆく。ただ黒酢商品はこの時点でも月商2億円に過ぎなかった。ちなみに『深海鮫生肝油 鮫珠』が3億円と黒酢を凌いでいる。08年、えがおの年商は50億円を突破した。同年、『もろみ黒酢ゴールド』を『えがおの黒酢』に名称変更。この年、北野社長により黒酢で日本一になるという方針が全社的に打ち出されることになる。


06年、健康酢市場に異変

 この2年前の06年7月13日、福岡の健食通販大手の(株)やずや(福岡市南区)の販売する『熟成やずやの香醋』に対し、公正取引委員会が排除命令を下している。同社が06年1月18日に全国各地の新聞販売店を通じ、一般日刊紙に折り込んだ宣伝チラシ約4,000万枚に対する措置だ。
「熟成やずやの香醋は、香醋を約20倍に濃縮して飲みやすいカプセルにしています」「約8ccの香醋を2球のカプセルに詰めました」などの広告表現で、実際には「香醋パウダー約20倍の重量に相当する香醋に含まれているアミノ酸の重量の5分の1程度」しか含まれていないとされ、一般消費者に対し、同品が実際よりも「著しく優良であるとの誤認を招く」ものと判断された。やずや側は、「(スプレードライヤーで)アミノ酸の水分をとばすときに成分が飛んだのだろう」として非を認めた。
 公正取引委員会は、「業界大手ということで影響を与えた金額も大きい」「表示も全国規模。総合的に見て市場競争に与える影響は多大」と判断し、「注意」抜きの排除措置を断行した。福岡経済界にも激震が走った。やずやの06年3月期の売上高は407億8,200万円に達していた。対象となった商品だけで240億円にも上る。その後、JADMA((社)日本通信販売協会)のマーク使用を自粛するなど、しばらくは謹慎の日々を送る。製造工場もそれまで委託していた井藤漢方製薬(株)(大阪府東大阪市)から別の工場に切り替えて、中国での生産体制を見直すなど苦難の道を歩むことになる。翌年3月期の決算では50億円の落ち込みを見せ、現在は200億円台で推移している。

(つづく)

【田代】

▼関連リンク
(株)えがお
公正取引委員会「やずやに対する排除命令」


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