特保に陰にかすむいわゆる健康食品
14日、消費者庁は第8回「健康食品の表示に関する検討会」を開催した。同検討会に関しては、各紙に「トクホ制度(特定保健用食品制度)存続」の見出しが躍っていた。花王のエコナ製品回収問題に端を発した同検討会だっただけに、業界は強い危機感を抱いていたのは確かで、特に大手特保メーカーはこれでひと安心と胸を撫で下ろしたことだろう。
しかし一般の健康食品の話はどこへ消えたのだろうか。
検討会では、花王のエコナ問題を発端として発足したもので、特定保健用食品(以下、特保)制度の見直しを含め、健康食品の表示のあり方についてその取り扱いを決めようというものだったはず。第4回検討会では、健康強調表示(ヘルスクレーム)を米国の制度を範とするか、それともEUの制度を範とするかなど、いかにも検討会の方向性がそちらに流れているかのような盛り上がりを見せていた。これは業界のひとり合点にすぎなかったのか。
検討会最中に突き出された2つの意見書
データ・マックスが入手した資料が2点ある。1つは、3月9日付で東京弁護士会会長名義で内閣府特命担当大臣の福島みずほ氏ならびに消費者庁長官、消費者委員会委員長、厚生労働大臣宛てに送られた意見書(別紙PDFリンク)で、2つ目は3月23日付で薬害オンブズパースン会議から上記4氏に送られた要望書(別紙PDFリンク)である。
前者の意見書には特保制度の抜本的見直しが声高に唱えられており、後者の要望書には特保の廃止論が滔々と展開されている。
この2つの書面が業界側に与えたショックは大きかったらしく、検討会メンバーが危機感を抱いたのも想像に難くない。
これらの意見書によって、まずは特保制度の死守という方向で業界サイドは結束せざるを得なかったのではないだろうか。
7月まで、わずかにあと3回を残すだけの検討会で、健康食品の表示制度にかかわる結論までたどりつけるはずもないのだが、それにしても今回の結果を見るにつけ業界側は大きくトーンダウンした感が否めない。一方の消費者団体側も、ここぞとばかりに健食たたきを加速させていた矢先だっただけに、出鼻をくじかれた思いではないだろうか。
これで業界サイドは勢いを殺がれ、消費者団体サイドも健食つぶしにブレーキがかからざるを得ない。何より、健康食品を利用している多数の消費者にとって、またしても健康食品の表示に覆いをかけられることになりかねない。このような事態を損得で計るのは不謹慎かもしれないが、まさに落語でいうところの三方一両損である。それで丸く収まるのであればまだよいが、どこかで誰かが大もうけを企んでいるとしたらどうだろう。ますます検討会の動向から目が離せない。
【田代】